刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#29

勾留③期間・延長と接見等禁止

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被疑者勾留の期間の全体像

起訴前の勾留は、原則の10日に、延長と特例が積み重なって最大25日になります。

段階日数ここまでの合計条文
勾留10日10日208条1項
延長通じて10日まで最大20日208条2項
内乱等の特例通じて5日まで最大25日208条の2
  • 期間の動き方は3つ:どこから数えるか(起算)、どう延びるか(延長)、いつ止まるか(停止)です。
  • 特例は日常の事件ではまず出てこない:ふつうの事件の上限は20日です。

起算点は「勾留を請求した日」

10日の1日目は、逮捕された日でも、勾留状が出た日でもありません。

候補起算日になるか
逮捕された日ならない
勾留質問の日ならない
勾留状が発付された日ならない
検察官が勾留を請求した日これが起算日(208条1項)
  • 条文の形:208条1項は「期間は10日とする」とは書いていません。「請求した日から10日以内に起訴しなければ、検察官は直ちに釈放しなければならない」という釈放義務の形です。
  • 手続が翌日にずれたとき:請求の翌日に勾留質問をして、勾留状を出すこともあります。
    • それでも起算日は請求の日のままです。ずれた1日は10日の中に食い込みます。
    • 裁判官側の手続が遅れても、拘束が長くなって被疑者が損をすることはありません。

208条(抜粋)|刑事訴訟法 第二編 第一審 第一章 捜査(189〜246条)1項:第二百七条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

数え方は初日算入

起算日が決まったら、その日を1日目に数えるかが次の問題です。

  • 一般の原則(初日不算入):刑事訴訟法の期間は、日で数えるとき初日を入れません(55条1項)。
    • 例:締切が「今日から10日」なら、今日は数えず、明日を1日目にします。
  • 勾留は初日算入:請求したその日を1日目に数えます。
    • 根拠:55条に勾留の例外は書かれていません。被告人の勾留で初日から数えた最高裁の決定があり、実務もそう扱います。
    • なぜ:初日を入れる方が満期が1日早くなり、拘束が短くなるからです。
数え方4月1日に請求したとき満期
初日算入(勾留)4月1日が1日目4月10日
初日不算入(一般の原則)4月2日が1日目4月11日
  • 休日も延びない:55条3項は、期間の末日が土日・祝日・年末年始なら、その日を数えないとしています。
    • 勾留では、初日と同じく、これも使いません。満期が日曜でも、翌日まで延びることはありません。
    • 55条は、初日の扱い(1項但書)も休日の扱い(3項但書)も、時効期間には原則を当てないと定めています。勾留期間は、この時効期間と同じ扱いをされています。

55条(抜粋)|刑事訴訟法 第一編 総則 第七章 期間(55〜56条)1項:期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。3項:期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、これを期間に算入しない。ただし、時効期間については、この限りでない。

延長は「やむを得ない事由」があるときだけ

10日の満期には、起訴するか釈放するかを決めるのが原則です。それでも捜査が足りないときの道が延長です。

  • 誰が・何をするか:検察官が延長を請求し、裁判官が「やむを得ない事由」があると認めたときに延ばします(208条2項)。
  • 「事件が複雑だから」だけでは足りない:次の3つがそろって、初めて「やむを得ない事由」になります。
要素中身
① 支障捜査を続けなければ、起訴するかどうかを決められない
② 不足最初の10日では、その捜査を終えられなかったと言える
③ 見込み延長すれば、その支障がなくなる見込みがある
  • 例:どれも「もう少し調べれば処分を決められる」事情です。
    • 関係者が多く、10日で全員の取調べが終わらなかった
    • 目撃者の都合がつかず、まだ話を聞けていない
    • 鑑定の結果がまだ出ていない
  • 回数と上限:何回に分けて請求してもかまいません。ただし合計は通じて10日までです。
    • 例:最初に7日延ばしたら、次に請求できるのは残りの3日だけです。
  • 勾留質問はしない:延長の判断は、書面で審理します。
  • 満期の例:4月10日満期の勾留を10日延長すると、4月20日までになります。

208条(抜粋)|刑事訴訟法 第二編 第一審 第一章 捜査(189〜246条)2項:裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

内乱等の特例(さらに5日)

20日で打ち止めにならない、ただ1つの例外です。

  • 対象になる事件:刑法第二編の第二章〜第四章と第八章の罪です。
    • 内乱の罪、外患の罪、国交に関する罪、騒乱の罪です。
  • できること:検察官の請求で、裁判官が、208条2項で延長した期間をさらに延ばせます。合計は通じて5日までです。
  • 満期の例:4月20日満期に5日足して、4月25日までになります。
    • 10日+延長10日+特例5日=最大25日の内訳です。

208条の2|刑事訴訟法 第二編 第一審 第一章 捜査(189〜246条)裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。

期間が止まる場面(鑑定留置)

期間は延びるだけでなく、数えるのを止める場面もあります。

  • 鑑定留置:被疑者の精神状態などを鑑定するため、病院などの施設に留め置く処分です。
  • 勾留中に鑑定留置をすると:留め置かれている間は、勾留の執行が停止したものとされます。
    • 条文は被告人について167条の2第1項にあり、被疑者には224条2項で準用されます。
  • 止まるのは「凍結」:リセットではありません。ゼロに戻って数え直すことはありません。
時期勾留期間の進み方
1日目〜7日目7日分進む
鑑定留置の間(例:3か月)進まない
施設から戻った日8日目として続きから再開する
  • 目印:使った日数は使ったまま、残りは残りのままです。

167条の2(抜粋)|刑事訴訟法 第一編 総則 第十二章 鑑定(165〜174条)1項:勾留中の被告人に対し鑑定留置状が執行されたときは、被告人が留置されている間、勾留は、その執行を停止されたものとする。

接見等禁止(止まるのは誰との面会か)

勾留中の被疑者に、さらに外部との面会ややり取りを禁じる処分が接見等禁止です。

(1) 前提:勾留の「理由」と「必要性」

接見等禁止の要件にも、勾留と同じ「逃亡・罪証隠滅のおそれ」という言葉が出てきます。

  • 勾留の理由:罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逃亡・罪証隠滅のおそれなどがあるかです。
  • 勾留の必要性:勾留してまで、それを防ぐ必要があるかです。

(2) 原則は、弁護人以外とも面会できる

  • 原則:勾留中の被疑者も、家族や友人などと、法令の範囲内で面会し、手紙や物をやり取りできます(207条1項・80条)。
    • 例外:逃亡・罪証隠滅を疑う相当な理由があるとき、裁判官が接見等禁止をかけられます(207条1項・81条)。
  • 誰が請求し、誰が決めるか:検察官の請求、または裁判官の職権で、裁判官が決定します。
  • 禁止できること:面会を禁じること、やり取りする書類や物を検閲すること、その受け渡しを禁じること、差し押さえることです。
    • ただし、食べ物(糧食)の受け渡しは禁じられず、差し押さえることもできません(81条但書)。
  • 被告人の条文を被疑者に使える理由:81条の主語は「裁判所」、対象は「被告人」です。
    • 207条1項が、勾留の請求を受けた裁判官に、裁判所・裁判長と同じ権限を与えています。だから起訴前の被疑者にも使えます。

81条|刑事訴訟法 第一編 総則 第八章 被告人の召喚、勾引及び勾留(57〜98条の11)裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

(3) 弁護人との接見は、どんな事件でも止まらない

  • 81条の対象外:81条は「39条1項に規定する者以外の者」との接見を禁じる規定です。39条1項の者とは、弁護人と弁護人になろうとする者です。
相手接見等禁止の対象か
弁護人・弁護人になろうとする者(39条1項)対象外(最初から除かれている)
親族・友人など、弁護人以外の者対象(面会・書類等の受け渡しを禁止できる)
  • 接見交通権:39条1項が保障する、立会人なしで弁護人と会い、書類や物をやり取りする権利です。
    • なぜ外すのか:この権利は、憲法34条の弁護人依頼権に由来します。81条はこれを害さないよう、弁護人を対象から外しています。
  • 注意:「接見禁止」と聞くと、全部の面会が止まるように聞こえます。止まるのは、弁護人以外との面会と物の受け渡しだけです。

39条(抜粋)|刑事訴訟法 第一編 総則 第四章 弁護及び補佐(30〜42条)1項:身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

接見等禁止の要件(条文と判例の2段)

81条の要件は、勾留の理由と同じ文言です。しかし判例は、それだけで禁止してよいとはしていません。

段何が要るか出どころ
条文の要件逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由81条
判例の絞り①勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれ最高裁決定
判例の絞り②接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれ最高裁決定
  • なぜ絞るのか:勾留しているのは、もともと逃亡や罪証隠滅を防ぐためです。同じおそれを理由にするだけでは、面会まで禁じる理由になりません。
  • 判例が見ているもの:面会や手紙を通じて、実際に証拠をつぶせてしまうかどうかです。
    • それを、事案の具体的な事情から認める必要があります。「まだ危ないから」という抽象的な理由では足りません。
  • 判例の絞りは罪証隠滅について:この決定が述べたのは罪証隠滅のおそれです。逃亡には触れていません。
    • 条文の要件(逃亡も含む)と、判例の絞りを混ぜて書かないようにします。
  • 判例の事案は起訴後の被告人:被疑者の勾留でも、207条1項で81条を使う以上、同じ枠組みで考えます。
  • 禁止が認められやすい事情
    • 組織性:組織ぐるみの事件で、外の仲間を通じて指示を伝えられる
    • 大規模さ:関係者が多く、口裏合わせの相手が多い
    • 実際の工作:勾留の前から、関係者への働きかけなどの隠滅工作がされていた

立会い・検査があっても、禁止が要る理由

面会には職員の立会いがあり、手紙は検査されます。それなら禁止まで要らないのでは、という疑問への答えです。

  • もともとある仕組み:立会い・検査は、接見等禁止の効果ではありません。禁止が無くても行われます。
    • 例:留置施設では、未決拘禁者の面会(弁護人等を除く)に職員が立ち会い(刑事収容施設法218条1項)、手紙を検査します(同222条1項)。
    • 接見等禁止が出ると、立会いどころか、弁護人以外との面会そのものができなくなります。
  • 現場の限界:立ち会う職員は、事件の中身に詳しくありません。隠語や遠回しな言い方で指示されると、見抜けないおそれがあります。
  • 実務で重く見るもの:禁止が必要かを判断するとき、立会い・検査があることよりも、事案の内容を重視します。
    • 組織性、大規模さ、実際の工作の有無です。

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