憲法ゼロから憲法#64

会期と参議院の緊急集会

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会期制(常会・52条)

会期

定義会期とは、国会が憲法上の権能を行使できる、限られた期間です。

理由期間を区切る理由は、次の3つです。

  • 議員の生活:議員も生活者で、選挙区に戻って活動する時間が要ります。
  • 審議の集中:期間を区切ると、審議を一つの案件に集中させやすくなります。
  • 行政の負担:国会が動く間、行政も対応の負担を負うので、それを無限に続けさせないためです。

常会(52条と国会法)

常会について憲法52条・国会法2条・国会法10条がそれぞれ定めている内容の表

定義常会は、いちばん基本になる会期です。

結論憲法が決めているのは頻度だけで、時期と長さは国会法が決めています。

  • 憲法52条:毎年1回召集する、とだけ定めています。
  • 国会法2条:1月中に召集するのを常例とします。
  • 国会法10条:会期は150日間です。

注意憲法と国会法の数字を、混ぜて覚えないようにします。

52条|第四章 国会(41〜64条)国会の常会は、毎年一回これを召集する。

会期制の根拠

結論会期制という言葉は、憲法のどこにも書かれていません。

条文憲法は、52条・53条・54条で、常会・臨時会・特別会の3種類の集会を定めています。

理由3種類の集会の定めから、国会は会期という区切られた単位で動く仕組みを採っている、と解釈されています。

注意条文に書いてあることと、解釈で導かれることを混同しないようにします。

臨時会(53条)

国会は、常会という区切られた会期の中で動きます。
では、常会だけでは足りないとき、国会はどう開かれるのでしょうか。

前段と後段

定義臨時会は、常会だけでは国会が対応しきれない場面で開かれる国会です。

条文53条は、召集の場面を2つ定めています。

  • 前段:内閣が必要と判断すれば、臨時会の召集を決定できます。
  • 後段:いずれかの議院の総議員の4分の1以上が要求すれば、内閣は召集を決定しなければなりません。

53条|第四章 国会(41〜64条)内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

4分の1の意味

結論後段の要求は、過半数ではなく4分の1で足ります。

理由院内で多数を握れない少数派でも、国会を開かせることができるようにするためです。

多数決の外側に置かれた、少数派を守るための武器です。

注意4分の1という線そのものが要件です。

総議員の10分の1程度が求めても、内閣に召集の義務は生じません。

召集義務と強制手段

定義欠缺とは、本来あってもよいはずの仕組みが、条文に定められていない状態です。

結論4分の1以上が要求しても内閣が召集を決定しないとき、召集義務の履行を強制する手段は、憲法にも国会法にも定められていません。

これは、憲法上の欠缺といわれます。

理由三権分立の下で、内閣の政治的な判断に司法や立法が直接介入する仕組みは限られているからです。

注意内閣に召集義務が無いわけではありません。

義務は、条文が「決定しなければならない」とはっきり課しています。

欠けているのは、義務を強制的に実行させる手段のほうです。

国会法が定める臨時会

結論臨時会が召集される場面は、53条後段の要求だけではありません。

国会法は、次の選挙の後にも、一定の日数以内に臨時会を召集すると定めています。

  • 衆議院議員の任期満了にともなう総選挙の後
  • 参議院議員の通常選挙の後

注意これらは、53条後段の4分の1の要求とは別の話です。

会期不継続の原則と一事不再議の原則

国会は、会期という区切られた単位で動きます。
では、会期が区切られていることから、審議中の案件にどのような効果が生じるのでしょうか。

会期不継続の原則(明文あり・国会法68条本文)と一事不再議の原則(明文なし・解釈上の運用)を根拠で比べた表

会期不継続の原則

定義会期不継続の原則とは、会期中に議決に至らなかった案件は、次の会期に持ち越さないという原則です。

途中まで進んでいた審議も、原則としてリセットされます。

条文国会法68条本文が定めています。

理由会期ごとに、一つの独立した意思決定の単位だと考えるからです。

注意これは憲法が要求している原則ではなく、国会法という法律のレベルの原則です。

だから、同じ68条のただし書で例外が作られています。

  • 例外:閉会中に審査した議案と、懲罰事犯の件は、次の会期に引き継がれます。

68条|国会法 第六章 会議(55〜68条)会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。但し、第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。

一事不再議の原則

定義一事不再議の原則とは、一度否決した案件を、同じ会期の中でもう一度審議しないという原則です。

結論一事不再議の原則には、明文がありません。

会期という区切られた単位の考え方から導かれる、解釈上の運用のルールです。

注意2つの原則は、次の2点で区別します。

  • 時間の範囲:会期不継続は会期をまたぐ話、一事不再議は同じ会期の中の話です。
  • 根拠:会期不継続は明文あり(国会法68条)、一事不再議は明文なしです。

参議院の緊急集会(なぜ必要か・要件)

会期制の下では、国会が開いていない時間があります。
では、衆議院が解散されて存在しない間に緊急の必要が生じたら、誰が決めるのでしょうか。

空白の期間(54条1項)

衆議院の解散から特別会の召集までの流れ(解散→40日以内に総選挙→30日以内に特別会召集・最長でおよそ70日)

定義特別会とは、衆議院の解散による総選挙の後に召集される国会です。

結論衆議院の解散から次の国会の召集まで、最長でおよそ70日、国会が活動できない期間ができます。

条文54条1項の期限は、次のとおりです。

  • 総選挙:解散の日から40日以内です。
  • 国会の召集:総選挙の日から30日以内です。

注意衆議院が解散されると、参議院も同時に閉会となります(54条2項本文)。

両議院は同時に召集され、同時に開会し、同時に閉会するからです。

54条|第四章 国会(41〜64条)1項:衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。2項:衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

緊急集会の3つの要件(54条2項ただし書)

定義参議院の緊急集会とは、衆議院が存在しない間に、参議院が国会を代行する制度です。

結論緊急集会の要件は、次の3つです。

  • 時期:衆議院の解散後、特別会の召集前であることです。
  • 必要性:国に緊急の必要があることです。
  • 求める主体:内閣が求めることです。

注意参議院議員が、自主的に緊急集会を開くことはできません。

臨時会との対比

臨時会(53条後段=総議員の4分の1以上の要求で召集)と緊急集会(54条2項=内閣の求めのみ・参議院議員の自主開催は不可)の対比表

結論臨時会と違い、緊急集会を求めることができるのは内閣だけです。

理由緊急集会は、衆議院が存在しないという異常な事態への、例外的な代行措置だからです。

  • 常設化の防止:参議院が自分の判断で開けるなら、参議院が常設的に国会の代わりを務めることになりかねません。
  • 濫用の防止:発動する主体を内閣一本に絞り、衆議院が戻るまでの一時しのぎにとどめています。

注意場面がそもそも違います。

臨時会は日常の少数派保護、緊急集会は非常時の代行です。

任期満了の場合

注意54条2項は、「衆議院が解散されたとき」を前提にしています。

衆議院議員の任期満了にともなう総選挙の場合、この条文に対応する規定はありません。

短答の引っかけになる点です。

緊急集会の権能と衆議院の同意(54条3項)

緊急集会は、衆議院が解散された後、内閣の求めで開かれます。
では、緊急集会は何を決められ、決めたことはいつまで有効なのでしょうか。

権能

定義不逮捕特権とは、会期の間は原則として逮捕されない特権です。

免責特権とは、議院での演説・討論・表決について、院外で責任を問われない特権です。

結論緊急集会は国会を代行し、法律案も予算も議決できます。

国に緊急の必要がある以上、必要な対応が一通りできるからです。

注意緊急集会中の参議院議員にも、不逮捕特権と免責特権が認められます。

通常の国会と違う3点

結論緊急集会には、通常の国会と違う点が3つあります。

  • 召集:天皇の召集によらないで開かれます。
  • 求める主体:求めることができるのは、内閣だけです。
  • できないこと:内閣総理大臣の指名と憲法改正の発議は、できないと解されています。

条文通常の国会の召集は、天皇の国事行為です(7条2号)。

理由緊急集会が代行できるのは国会の権能一般で、国会そのものを組み立て直すような根本的な決定までは含まない、と理解されているからです。

注意指名と発議ができないことは、条文に書かれているのではなく、解釈です。

7条|第一章 天皇(1〜8条)天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。二 国会を召集すること。

衆議院の同意(10日以内)

結論緊急集会で採られた措置は臨時のものです。

次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意が必要です。

注意条文の言葉は「次の国会」です。

実務上は、その後に召集される特別会を指すことが多いですが、条文は「特別会」とは書いていません。

54条|第四章 国会(41〜64条)3項:前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

同意が無いときの効果(将来に向かって無効)

衆議院の同意が無いときの効果(これから先の措置=効力を失う/すでに実行された措置=覆らない・遡及しない)

結論同意が無い場合、措置は将来に向かって効力を失います。

過去にさかのぼって無効になるわけではありません。

理由緊急の必要に応じて行われた措置を信頼して、国民や行政はすでに動いています。

後から根こそぎ覆すと、その信頼のうえに築かれた法律関係が崩れてしまいます。

緊急集会は、暫定的だけれど有効な代行を認める制度だからです。

具体例緊急集会が、生活支援金を配る法律を成立させ、振り込みが済んだ後に、衆議院が同意しなかった場合です。

  • すでに振り込まれたお金:返してもらうことはできません。
  • まだ配っていない支給:これからの支給は止まります。

会議の原則:定足数と表決数(56条)

緊急集会は、衆議院が存在しない間の代役でした。
では、両議院が実際に議事を開いて決を採るには、どれだけの出席と賛成が要るのでしょうか。

定足数と表決数

定義56条は、2つの数字を定めています。

  • 定足数(1項):議事を開き議決するのに必要な出席の数で、総議員の3分の1以上です。
  • 表決数(2項):議事を決する賛成の数で、出席議員の過半数です。

結論可否同数のときは、議長が決めます。

表決数の原則には、「この憲法に特別の定のある場合を除いては」という限定が付いています(第7節)。

56条|第四章 国会(41〜64条)1項:両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。2項:両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

国会法56条1項との区別

国会法56条1項(法律案を発議するための人数・衆議院20人以上/参議院10人以上)と憲法56条1項・2項(議事を開き議決するための要件・定足数と表決数)の対比表

結論国会法56条1項と憲法56条は、扱う場面が違う別の条文です。

  • 国会法56条1項:法律案を発議するための人数の要件です。
  • 憲法56条:議事を開いて、実際に決を採るための要件です。

注意数字も条文番号も似ているので、必ず法令名を付けて区別します。

総議員と出席議員

定足数(憲法56条1項)の基準は総議員、表決数(憲法56条2項)の基準は出席議員であることを示す表

結論定足数と表決数では、基準(分母)が入れ替わります。

議事を始められるかは総議員で見て、実際に決めるときは出席した議員で見ます。

注意「総議員」の意味には、次の対立があります。

  • 法律で定められた定数で数える考え方
  • 実際に今いる議員の数で数える考え方

議院の先例では、法律で定められた定数のほうで扱われています。

過半数で決まらない議決(特別多数決)

表決数の原則は、出席議員の過半数です。
では、この原則によらず、より高いハードルが要る議決には何があるのでしょうか。

特別多数決を分母で分けた表(出席議員の3分の2以上=55条ただし書・57条1項ただし書・58条2項ただし書・59条2項/総議員の3分の2以上=96条1項)

出席議員の3分の2以上(4つ)

結論出席議員の3分の2以上が必要な議決は、次の4つです。

  • 資格争訟:資格争訟の裁判で、議員の議席を失わせる議決です(55条ただし書)。
  • 秘密会:秘密会を開く議決です(57条1項ただし書・第8節)。
  • 除名:懲罰として議員を除名する議決です(58条2項ただし書)。
  • 再議決:参議院と異なる議決をされた法律案を、衆議院が再び可決する議決です(59条2項)。

55条|第四章 国会(41〜64条)両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

58条|第四章 国会(41〜64条)2項:両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

59条|第四章 国会(41〜64条)2項:衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

総議員の3分の2以上(1つ)

結論総議員の3分の2以上が必要な議決は、憲法改正の発議(96条1項)だけです。

96条|第九章 改正(96条)1項:この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

分母の違いの理由

出席議員が基準だと欠席が多い日ほど可決しやすくなり、総議員が基準だと欠席の影響を受けずハードルが下がらないことを示す表

結論同じ「3分の2」でも、分母の選び方がその決定の重さを表しています。

理由出席議員を基準にすると、欠席する議員が多い日ほど、分母が小さくなって可決しやすくなります。

憲法改正の発議は、国のかたちそのものを変える重い決定です。

だから、欠席者を分母から外さず、総議員を基準にしています。

注意数字だけでなく、分母まで含めて覚えます。

会議の公開(57条)

議決の数字は、分母まで含めて定められています。
では、両議院の会議は、どこまで外から見えるのでしょうか。

公開の原則と秘密会(1項)

結論両議院の会議は、公開が原則です。

例外として、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができます。

会議の記録(2項)

結論両議院は、会議の記録を保存し、公表しなければなりません。

注意秘密会の記録のうち、特に秘密を要すると認められるものは、公表の対象から外れます。

表決の会議録への記載(3項)

結論出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決を会議録に記載しなければなりません。

理由誰が何に賛成し、誰が何に反対したかが、記録として残るからです。

少数派が、この記録を求める権利を持っています。

注意臨時会の4分の1(53条後段)と並んで、少数派を守るための数字です。

分母は、臨時会が総議員、表決の記載が出席議員です。

57条|第四章 国会(41〜64条)1項:両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。2項:両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。3項:出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

委員会と両院協議会(公開の強さ・委員会中心主義)

本会議は、公開が原則です。
では、本会議以外の委員会や両院協議会は、どこまで公開されるのでしょうか。

本会議・委員会・両院協議会の公開の原則と例外(本会議=公開が原則・秘密会は出席議員の3分の2以上/委員会=非公開が原則・報道機関等は委員長の許可で傍聴可/両院協議会=公開が禁止・例外なし)

委員会(非公開が原則)

結論委員会は、本会議と逆に、非公開が原則です。

条文国会法52条1項は、委員会は議員のほか傍聴を許さない、と定めています。

ただし、報道の任務にあたる者などは、委員長の許可があれば傍聴できます。

注意「非公開」と「見えない」は同じではありません。

両院協議会(公開が禁止)

定義両院協議会とは、衆参の議決が食い違ったときに、双方の委員が妥協案を探す場です。

結論両院協議会は、公開が禁止で、例外はありません。

条文国会法97条は、両院協議会は傍聴を許さない、と定めています。

注意「非公開が原則」と「公開が禁止」は、強さが違います。

  • 本会議:公開が原則です。
  • 委員会:非公開が原則で、例外があります。
  • 両院協議会:公開が禁止で、例外がありません。

委員会中心主義

定義委員会中心主義とは、国会の審議の中心が、本会議ではなく委員会にあることです。

結論実際に中身を詰めるのは委員会で、本会議はその結果を最終的に議決する場です。

条文国会法40条以下が、委員会を定めています。

  • 種類:常任委員会と特別委員会の2種類です。
  • 常任委員会の数:衆議院・参議院とも、それぞれ17です(国会法41条2項・3項)。

具体例常任委員会は、ほぼ省庁に対応する形で置かれています。

特別委員会は、必要に応じて作られます。

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