憲法ゼロから憲法#2

立憲主義と法の支配

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社会契約説と近代立憲主義

自然状態

定義自然状態は、権力が無い状態です。

誰もが自然権を持ちますが、それを守れません。

結論権力が無い状態のほうが、ずっと危険です。

理由力の強い者が押し切る、弱肉強食になってしまうからです。

社会契約

定義社会契約は、人々が合意して、権力を作ることです。

結論人々は全権委任をせず、権力の権限をあらかじめ限定しておきます。

この限定が、憲法にあたります。

抵抗権

定義抵抗権は、権力が限定を無視して暴走したとき、人々がその決定に従う義務を失うことです。

立憲主義と近代立憲主義

定義2つの言葉は、次のように区別します。

  • 立憲主義:憲法に基づいて政治を行う、という原理です。
  • 近代立憲主義:そのうち、人権を守るために権力を縛るものです。

結論憲法は、後から付け足された制約ではありません。

権力を作る契約に、最初から組み込まれた縛りです。

各国における立憲主義

近代立憲主義は、人権を守るために権力を縛る考え方です。
その立憲主義は、国ごとにどう育ったのでしょうか。

フランスは法律による人権保障で議会への信頼が強く、アメリカは憲法による人権保障で議会への不信が強い。戦前のドイツ・日本は統治のしくみはあるが人権思想を欠く外見的立憲主義

外見的立憲主義

定義外見的立憲主義は、統治のしくみはあっても、人権を守る思想を欠いている状態です。

つまり、固有の意味の憲法はあるのに、立憲的意味の憲法ではない状態です。

具体例戦前のドイツや日本です。

国家像の変遷(自由国家から行政国家現象へ)

権力を縛る必要が生まれたわけは、社会契約説で説明されます。
では、国家が個人の生活に手を出す範囲は、昔から同じなのでしょうか。

国家像の変遷。自由国家(夜警国家)は個人領域への立ち入りが最小限、社会国家(福祉国家)は積極的に手を回しワイマール憲法が最初に明文化、行政国家現象では行政の裁量が集中し監視が必要になるが原則は今も自由国家

自由国家と社会国家

定義それぞれ、別の呼び方があります。

  • 自由国家:消極国家とも呼ばれます。
  • 社会国家:積極国家とも呼ばれます。

具体例社会国家の理念を最初に明文化したのは、20世紀のワイマール憲法です。

行政国家現象

定義行政国家現象は、決める力が立法より行政に集中していくことです。

結論行政国家現象の下では、行政権への監視が重くなります。

理由行政の裁量が大きくなるほど、公平にやっているかをチェックする必要が増えるからです。

注意行政国家現象が生じても、原則は今もなお自由国家のままです。

国家が個人の領域に立ち入るのは、あくまで補完・例外です。

立憲主義と民主主義の結合(立憲民主主義)

国家像が変わっても、原則は今も自由国家のままです。
では、個人の自由を守る考え方と、多数決で決める民主主義は、どういう関係にあるのでしょうか。

自由主義

定義自由主義は、個人の自由を守るべきだ、という考え方です。

結論自由主義は、立憲主義の土台です。

注意第3節の「自由国家」は国家の役割の広さの話で、自由主義とは別の話です。

自由主義と民主主義の関係

結論自由主義と民主主義は、互いを支え合う循環の関係にあります。

  • 自由主義:民主主義を、実質的に機能させます。
  • 民主主義:自由の意味を支えます。

具体例どちらかが欠けると、もう一方も意味を失います。

  • 批判の自由が無い:候補者への批判が許されなければ、選挙結果は操作されたものになります。
  • 投票の仕組みが無い:自由に意見を言えても、決定に落とし込む仕組みがなければ、何も変わりません。

立憲民主主義

定義立憲民主主義は、自由主義と民主主義の循環の関係のことです。

結論立憲民主主義は、多数決でも奪えないものがあることを前提にしています。

法の支配(4要素と条文)

立憲民主主義は、多数決でも奪えないものがあることを前提にしています。
では、法によって権力を縛るとはどういう考え方で、憲法のどこに現れているのでしょうか。

法の支配と人の支配

定義2つは対になる言葉です。

  • 法の支配:権力者個人ではなく、法によって権力を縛る考え方です(英米法の根幹)。
  • 人の支配:王や独裁者など、特定の誰かの意思で決まる状態です。

結論法の支配は、人の支配を否定します。

法の支配の4要素と条文。①憲法の最高法規性=第10章・98条1項、②侵すことのできない人権の保障=11条・97条、③適正手続の保障=31条、④裁判所の役割の尊重=第6章・81条(違憲審査権)

① 憲法の最高法規性

98条|第十章 最高法規(97〜99条)1項:この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

② 侵すことのできない人権の保障

11条|第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

97条|第十章 最高法規(97〜99条)この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

③ 適正手続の保障

結論法律さえあれば、何をしてもいいわけではありません。

法律の中身・手続そのものの正しさまで問います。

条文国民の生命や自由を奪うには、法律で定めた手続によらなければなりません。

31条|第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

④ 裁判所の役割の尊重

条文81条は、裁判所に違憲審査権を与えています。

81条|第六章 司法(76〜82条)最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

法の支配と形式的法治主義

法の支配は、法の中身まで含めて権力を縛る考え方です。
では、同じく法で権力を縛る形式的法治主義とは、何が違うのでしょうか。

法の支配と形式的法治主義の比較。共通点は法による権力の制限。相違点①中身の検査=法の支配は内容の正しさまで要求し、形式的法治主義は要求しない(悪法も法なり)。相違点②政治体制=法の支配は民主主義と結びつき、形式的法治主義は政治的に中立

共通点

結論法の支配も形式的法治主義も、法によって権力を制限する点は同じです。

法の内容

結論法の中身の正しさを求めるかどうかが違います。

  • 法の支配:「正しい法」を要求します。
  • 形式的法治主義:手続が揃っていれば、正式な法として通します。

形式的法治主義と独裁制

注意「形式的法治主義は独裁制と結びつく」は誤りです。

形式的法治主義は特定の体制を選ばない(中立)からこそ、独裁の下でも採用されうるのです。

実質的法治主義

定義実質的法治主義は、内容の正しさまで求める考え方です。

法の支配とほぼ同じ中身です。

具体例第2次世界大戦後のドイツが、形式的法治主義への反省から、この考え方に転換しました。

全員が賛成して成立した法律なら、何をしてもよいか

結論法の支配では、内容が人権を侵害するなら、正しい法とは言えません。

手続と中身の両方を見て、初めて「正しい法」です。

注意形式的法治主義では、手続を踏んでいれば正式な法です。

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