刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#18

捜査の端緒①職務質問

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骨格土俵が警職法2条に移ると、何が変わり、何が変わらないか

  • 1 位置:職務質問は捜査ではなく、捜査の端緒の1つ=警職法に基づく行政警察活動。捜査(司法警察活動)との分かれ目は、特定の犯罪の嫌疑を前提とするか(時間の前後ではない)。
  • 2 根拠:警職法2条。1項=「何らかの犯罪」の疑い・事情を知る者を停止させて質問できる/2項=同行を求めるだけ/3項=拘束・連行・答弁の強要の禁止/4項=逮捕されている者の凶器の調べだけ。
  • 3 判断の2段(捜査と同じ形)
    • 1階:強制処分か。基準は刑訴法と同じ → 当たれば2条3項違反で直ちに違法(令状で救う道は無い)。
    • 2階:任意処分として警職法1条2項(必要な最小の限度)を満たすか。右の皿は警察目的からの広い必要性。
  • 4 腕に手をかけた事件:逃げた相手の腕に手をかけて止めた行為=正当な職務執行の範囲内(最高裁は原判決を正当とした)。解説書は、1階=一時的な侵害で強制でない、2階=必要最小限、と読む。
  • 5 なぜ有形力を使えるか:権限創設規定(多数説)/確認規定(実務家中心)。
  • 6 切替点:特定の犯罪の嫌疑が明らかになり捜査に移った時点から、刑訴法の物差し。先の違法は、それを前提に接着した捜査に及ぶと考えられる(解説書)。

⚠ 告知が要らない≠答える義務がある/「職務質問でも令状を取れば」は誤り/腕に手をかけた事件の理由づけは原審と解説書のもので、最高裁は理由を書いていない

位置:職務質問は端緒であり、行政警察活動

職務質問は、捜査が始まる前の「きっかけ」の1つで、刑事訴訟法ではなく警職法に基づく行政警察活動です。

  • 流れ:端緒(通報・新聞記事・インターネットの書き込み・職務質問など)→ 司法警察職員が「犯罪があると思料する」(189条2項)→ ここで捜査が始まる。
    • 例:「端緒に制限は無いのだから、職務質問のやり方も自由」は誤り → 制限が無いのは、きっかけの出どころです。職務質問のやり方は、警職法2条と1条2項が縛ります。
    • 職務質問から捜査が始まることはあります。ただし、職務質問そのものは捜査ではありません。

189条(抜粋)|刑事訴訟法 第二編 第一審 第一章 捜査(189〜246条)2項:司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。

  • 2つの警察活動:分かれ目は、特定の犯罪の嫌疑を前提とするかどうかです。
    • 何の犯罪か見当がついていても、疑いが不確実なうちは足りません。特定の犯罪の嫌疑が明らかになり、捜査に移ったと認められる段階から、刑事訴訟法が適用されると考えられています(第6節)。
行政警察活動司法警察活動
特定の犯罪の嫌疑要らない(予防のためにも動ける)あることが前提
根拠警職法(職務質問は2条)刑事訴訟法(197条など)
主な目的犯罪の予防、公共の安全と秩序の維持犯罪の捜査
例警察官Aが、夜間の駅前で、不審な様子のBに声をかけるAが、捜査中の傷害事件の目撃者Cに事情を聞く
処分の呼び方任意処分・強制処分(捜査ではないので「捜査」と呼ばない)任意捜査・強制捜査
  • 時間の前後では分けない:職務質問は、既に行われた犯罪についてもできます(警職法2条1項「犯し」「既に行われた犯罪」)。
    • 例:巡回中の警察官が、路上の割れたガラスと血の跡に気付き、近くで落ち着かない様子の通行人に「何か見ましたか」と尋ねた。何の犯罪が起きたのかまだ分からない → 既に起きたかもしれない犯罪についての、職務質問(第2節の対象②)の場面です(2条1項の入口を満たす前提)。
    • 例:「この場所で人が刺された」という通報を受け、その傷害事件の目撃者を探して同じ通行人に話を聞いた → 特定の犯罪の嫌疑を前提にした捜査です。刑事訴訟法の物差しで測ります。
    • どちらも「見た人に聞く」場面です。分けるのは、特定の犯罪の嫌疑(相手が犯人だという疑いに限らない)を前提に動いているかです。

根拠:警職法2条を項ごとに読む

1項が「誰を止めて質問できるか」、2項・3項が同行と禁止、4項が逮捕されている者の凶器の調べを定めます。職務質問の相手の持ち物を調べる規定は、2条にはありません。

(1) 1項:4つの部品

  1. 入口:「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して」。外から確認できる事情が要り、警察官の勘だけでは足りません。
  2. 対象①:「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」。特定の犯罪でなくてよいので、捜査より対象が広くなります。
    • 例:深夜、閉店した時計店のシャッター前で、手袋をした男が鍵穴をのぞき込み、警察官を見ると顔をそむけた → 盗みの下見か別の目的かは特定できません。それでも「何らかの犯罪を犯そうとしている」と疑う相当な理由があれば、停止させて質問できます。
  3. 対象②:既に行われた犯罪・行われようとしている犯罪について「知つていると認められる者」。犯人でなくてよく、目撃者なども入ります。
  4. できること:「停止させて質問することができる」。

2条(質問)(抜粋)|警察官職務執行法1項:警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

(2) 2項・3項:求めることはできる、強いることはできない

  • 2項:同行の要求:職務質問はその場で行うのが基本です。例外として、その場で質問すると本人に不利なとき、または交通の妨害になるときは、近くの警察署・派出所・駐在所への同行を求めることができます。応じるかどうかは相手の自由です。職務質問に伴う任意同行の根拠です。
    • 例:雨の繁華街で、狭い歩道の真ん中で質問が長引き、人の流れが止まっている → 交通の妨害になるので、近くの交番への同行を求めることはできます。相手が断ったのに腕を引いて連れて行けば、意に反する連行で3項違反です。
  • 3項:禁止:1項・2項の相手は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄の拘束・意に反する連行・答弁の強要をされません。
    • 現行犯逮捕のように、刑事訴訟法が認める手続によるなら別です。
  • 黙秘権の告知と答弁の強要は別の問題
    • 職務質問の間:告知は不要です(「被疑者の取調べ」ではない)。それでも答える義務は無い(3項)。
      • 例:「黙秘権を告げずに名前を聞いたから違法」は誤り → 職務質問では告知は要りません。反対に「名前を言うまで帰さない」と迫れば、答弁の強要です。
    • 捜査に移った後:刑事訴訟法が適用されます(解説書)。被疑者として取り調べるなら、あらかじめ告げます(198条2項)。
      • 例:質問中、バッグから注射器と白い粉の包みが見え、覚醒剤の嫌疑が明らかになった → 以後の取調べには告知が要ります。

2条(質問)(抜粋)|警察官職務執行法2項:その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。3項:前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。

(3) 4項:書いていないこと

  • 4項の中身:刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者について、身体に凶器を持っていないか調べられます。
    • 例:「凶器を持っていそうなら、4項で職務質問の相手の上着の中も調べられる」は誤り → 4項は「逮捕されている者」の規定です。逮捕前の相手には使えません。

2条(質問)(抜粋)|警察官職務執行法4項:警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。

  • 書いていないこと:逮捕されていない職務質問の相手の持ち物を調べてよいという規定は、警職法2条のどこにもありません(銃刀類の疑いがある場合に限った規定は、別の法律にあります)。
    • それでも、職務質問の場面で持ち物を調べることはよくあります。明文の無いところで、なぜ許されるのか。これが所持品検査という論点の出発点です。

判断の2段:形は捜査と同じ、変わるのは根拠と行き先

まず強制処分か(当たれば警職法2条3項で直ちに違法)、次に任意処分として警職法1条2項の比例原則を満たすかを問います。強制処分の基準と天秤の形は、捜査と変わりません。

捜査(既習)職務質問(行政警察活動)
1階:強制処分の基準相手方の明示または黙示の意思に反して、重要な権利・利益に対する実質的な侵害・制約を伴うか同じ
1階の根拠条文197条1項但書警職法2条3項
強制と出たとき刑事訴訟法に定めのある処分なら、令状などの手続を踏んで行える場合がある直ちに違法
2階の根拠判例が作った規範(必要性、緊急性などをも考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度)警職法1条2項(必要な最小の限度=明文)
左の皿対象者の権利・利益の侵害・制約の程度同じ
右の皿捜査の必要性(特定の犯罪の嫌疑が出発点)警察目的からの広い必要性(犯罪の予防を含む)
  • ここでの「任意処分」=強制処分に当たらない処分。2項の「応じるかは相手の自由」とは別の意味で、意思に反する、強制に至らない有形力(第4節)も入ります。
  • 基準が同じ理由:2条3項は「刑事訴訟に関する法律」を基準にしています。だから禁止される強制は、刑事訴訟法上の強制処分と同じものと考えます。
    • 3項が挙げる拘束・連行・答弁の強要は例示で、これに限られないと考えられています(解説書)。
  • 「直ちに違法」の意味:職務質問には、強制を正当化する手続(令状など)がありません。強制が要るなら、刑事訴訟法の手続(現行犯逮捕など)か、警職法の別の規定(5条の制止など)の要件を満たす必要があります。
    • 例:「職務質問で強制が要るなら、令状を取ればよい」は誤り → 職務質問として強制を使えば、その時点で2条3項違反です。現行犯逮捕などの要件を満たせば、捜査に移ることはできます(その後は刑事訴訟法で測る)。
  • 警察比例の原則:強制に当たらなくても、それだけで適法にはなりません。手段は目的のため「必要な最小の限度」で用いる、という1条2項のルールを満たす必要があります。捜査の天秤は判例が組み立てた規範でしたが、こちらは条文に書いてあります。
    • 例:空き巣が続く住宅街で、警察官を見て急に走り出した男の腕をつかんで止め、手を離してから数分質問した → 予防の必要性と短い停止の侵害を比べると、相当の方向です。
    • 例:目が合っただけで逃げてもいない通行人の腕を強くつかんで引き留める → 必要性が乏しく、腕を強くつかんで引き留める侵害と釣り合わないので、「必要な最小の限度」を超える方向です。
  • 右の皿が広い理由:1条2項の「前項の目的」は、1条1項が挙げる犯罪の予防・公安の維持などです。警察法2条1項も、警察の責務に犯罪の予防を正面から入れています。
    • だから職務質問の必要性は、特定の犯罪の捜査にとどまらず、これから起きるかもしれない犯罪の予防まで含めて測ります。
      • 例:要人の街頭演説の直前、会場の周りを長時間うろつき、演説台の位置を何度も撮影している男がいる → 何の犯罪も起きておらず、特定の犯罪の嫌疑もありません。それでも犯罪の予防という警察目的からは、声をかけて事情を聞く必要性があります。

1条(この法律の目的)|警察官職務執行法1項:この法律は、警察官が警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。2項:この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。

2条(警察の責務)(抜粋)|警察法 第一章 総則(1〜3条)1項:警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。

逃げた相手の腕に手をかけた事件:2つの段に当てる

最高裁は、逃げ出した相手の腕に手をかけて止めた行為を適法とした原判決を、正当としました(裁判要旨=正当な職務執行の範囲を超えない)。解説書は、この事件を1階と2階の両方の素材として読みます。

事実逃げ出した相手の腕に手をかけた事件(最決昭29・7・15)

  • 夜、パトロール中の警察官から職務質問を受け、駐在所に任意同行された人が、所持品などを質問されている途中で、隙をみて逃げ出しました。
  • 警察官は、質問を続けるために追いかけ、背後から腕に手をかけて止めました。事件名は公務執行妨害です。
  • 公務執行妨害罪(刑法95条1項)は、職務を執行する公務員に暴行・脅迫を加えたときに成り立ち、その職務は適法でなければならないと解されています。そのため、腕に手をかけた行為の適法性が問われました(被告人の行為は決定文に書かれていません)。
  • 原審=最高裁の1つ前の裁判所(ここでは高等裁判所)。その判断が原判決です。
  • 原審の認定(解説書の紹介):約130m先の路上で追いつき、「どうして逃げるのか」と言いながら腕に手をかけた。
  • 最高裁は上告を棄却し、原判決の判示を正当としました。職務質問についての理由は書いていません。
段原審の判断(解説書の紹介)解説書の読み
1階:強制か「強制または強制的手段であるとはとうてい考えられない」人身の自由への一時的な侵害にとどまり、重要な権利・利益の実質的な侵害・制約には至っていない=任意処分
2階:相当か任意に止まらない相手を止めるには、この程度の実力はやむを得ず、正当な職務執行上の手段方法目的のため必要最小限だったかを検討したうえで、適法とされた
  • 2階に当てはめるなら:右の皿=任意に止まらず逃げた相手を止めて質問を続ける必要(裁判要旨・原審)/左の皿=腕に手をかける一時的な侵害(解説書の1階の評価)。振り分けはこのノートの整理です。
  • 下のカードは判例集の裁判要旨です(決定文の言葉ではありません)。

逃げ出した相手の腕に手をかけた事件最高裁判所決定正当な職務執行の範囲夜間道路上で警邏中の警察官から職務質問を受け、巡査駐在所に任意同行された所持品等につき質問中、隙をみて逃げ出した被告人を、更に質問を続行すべく追跡して背後から腕に手をかけ停止させる行為は、正当な職務執行の範囲を超えるものではない。

(1) 腕・タックル・手錠:強さの並び(設例)

警察官Aが、逃げようとする対象者Bを止める場面です。分かれ目は、有形力の強さと、拘束が一時的かどうかです。見る順は、まず強さ(手錠級なら短くても強制の方向)、次に一時的か、です(このノートの整理)。

Aがしたこと評価その後
① 追いついて、背後から腕に手をかける強制でない=任意処分(原審・解説書の読み)2階の比例原則へ
② タックルして倒す、羽交い締めにする強制に当たるとする見解がある。解説書は、一時的な拘束なら強制ではなく、比例原則で相当性を検討すべきとする強制なら直ちに違法/強制でなければ2階へ
③ 手錠をかけて制圧する強制処分(強い有形力は、一時的でも強制と評価される可能性が高い)2条3項違反で直ちに違法
  • 一時的な拘束なら、おおむね強制でない:原判決は「逮捕は…或る程度の時間的拘束を含む観念」とします。強制処分の典型である逮捕が時間の拘束を含む以上、一時的な拘束ならおおむね強制に当たらない、と解説書は読みます。
    • ただし、時間だけでなく有形力の強さも見ます(表の③)。
    • 例:追いついた警察官が相手を地面に押し倒し、数分間、上から押さえつけて身動きを封じたまま質問を続けた → 有形力が強く、拘束も一時的とは言いにくいので、強制に当たる方向です(このノートの当てはめ)。
    • 例:押し倒した直後に起こし、立ったまま質問を続けた → 解説書の立場なら、それ自体は強制ではなく、2階の相当性の問題です(強制とする見解もあります)。

なぜ有形力を使えるのか:権限創設規定か確認規定か

行政警察活動でも、腕に手をかけるような強制に至らない有形力を使えるのはなぜか。警職法2条1項の性質の理解が分かれます。

  • 一斉検問:不審な点の無い車も含め、通る車を次々に止めて調べることです(下の表で使う語)。
多数説(権限創設規定)実務家中心の見解(確認規定)
2条1項の性質強制に至らない限度で有形力を使う権限を与えた規定警察官が当然にできる活動を確認しただけの規定
有形力の根拠権利・利益を侵害する行政活動には法律の根拠が要る(法律の留保)。それが2条1項任意処分でも一定の有形力は使えるとした最高裁の決定(最決昭51・3・16)
結びつく立場承諾のない所持品検査・一斉検問は、根拠なしに行えば違法とする立場に結びつきやすい2条1項の要件を満たさない職務質問も許される/一斉検問は警察法2条1項を根拠に許される
  • 両説に共通する点:純粋な任意処分(声をかけて尋ねるだけ)なら、法律の根拠は要りません。争いは、有形力を使う場面の根拠です。
    • 例:「権限創設規定説では、2条1項が無ければ警察官は人に声もかけられない」は誤り → 両説とも、ただ声をかけて尋ねるだけなら根拠は要らないと考えます。争いは、腕に手をかけるような有形力の根拠です。
  • 立場が分かれやすい場面:承諾のない所持品検査(2条に明文が無い)や一斉検問(2条1項の要件を満たさない相手を止める)のように、2条1項の文言から外れる働きかけです(表の「結びつく立場」の行)。
  • ただし書き:権限創設規定説でも、職務質問に「付随する行為」まで2条1項が許していると考えれば、「停止」以外の実力も認められます。

切替点:職務質問はいつ捜査になるか

嫌疑が明らかになり捜査に移った時点から、刑事訴訟法の物差しで測ります。

  • 切替点:特定の犯罪の嫌疑が明らかになり、捜査に移ったと認められる時点です(189条2項の「思料するとき」に当たると説明されることもある)。嫌疑が不確実な間は警職法(2条3項・1条2項)、明らかになった後は刑事訴訟法(197条1項・任意捜査の限界)で測ります。
    • 例:「覚醒剤を使っていると疑って声をかけたのだから、最初から捜査」は誤り → 疑いを持っていても、嫌疑が不確実なまま質問していれば、警職法上の職務質問です。
    • 例:質問中、相手が「さっき駅で人を殴ってきた」と自分から話し、駅でけが人が出ていることも無線で確かめられた → 特定の犯罪の嫌疑が具体化したので、ここから先は捜査として刑事訴訟法で測ります。それより前に相手を止めた行為は、警職法で測ります。
  • 区別しにくい:嫌疑が明らかになると、そのまま任意捜査に移ることが少なくなく、はっきり区別するのが難しい場合も多い、と整理されています。最高裁も、どの時点で移ったかを明確には示していません。
  • なぜ時点が問題になるか:先に行われた行政警察活動に違法があれば、それを前提に接着して行われた捜査も違法になると考えられています(解説書)。
    • 「それを前提に接着して」=先の違法の結果を使い、それとひと続きで行われた、と読めます(後の捜査が何でも違法になるわけではない)。
    • 例:職務質問の段階で、逃げようとした相手に手錠をかけて動けなくし、持ち物から覚醒剤が見つかって、続けて現行犯逮捕した → 手錠は強制処分で直ちに違法です。解説書の考え方(先の違法は、それを前提に接着した捜査に及ぶ)に当てはめると、逮捕も違法の方向です。証拠として使えるかは別の論点です。

(1) 答案の型:3段

事例問題では、端緒(職務質問)→ 捜査の順に検討します。

  • 1段目 そもそも行政警察活動か:嫌疑がまだ明らかでない段階か(明らかなら捜査=197条1項の物差しへ)。
  • 2段目 強制処分に当たらないか:意思に反して重要な権利・利益を実質的に侵害・制約するか。当たれば2条3項違反で直ちに違法。
  • 3段目 任意処分として警職法1条2項の比例原則を満たすか:侵害・制約の程度(左の皿)と警察目的からの広い必要性(右の皿)が釣り合えば相当。

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