行政法ゼロから行政法#37

白紙委任の禁止

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第3章 行為形式の地図と行政基準 ㊲/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

同じ「省令で定める」の2通りの書き方

架空の屋上菜園登録制度の続き(実在の制度とは無関係/架空の法律の抜粋・2案/【A】屋上菜園の運営者の登録に関する事項は、すべて省令で定める。/【B】登録を受けることができる管理責任者の資格は、屋上の安全を保つために必要な知識及び経験を有する者として、省令で定める。※条番号は付けない/問い=どちらも「省令に任せる」。Aは有効か。Bとの違いはどこか) 図:架空の屋上菜園登録制度の続き

  • 実在の制度とは無関係
  • 架空の法律の抜粋・2案
  • 【A】屋上菜園の運営者の登録に関する事項は、すべて省令で定める。
  • 【B】登録を受けることができる管理責任者の資格は、屋上の安全を保つために必要な知識及び経験を有する者として、省令で定める。※条番号は付けない
  • 問い=どちらも「省令に任せる」。Aは有効か。Bとの違いはどこか

前回の最後に、統制は2つの視点に切り分ける、と言いました。任せる法律の側と、任された命令の側です。今日は、その前半、任せる法律の側の問題を見ます。前回の屋上菜園の登録制度を、もう一度使います。実在の制度とは関係のない、架空の話です。国が法律を作るとき、登録の要件の書き方が、2通りあったとします。Aは、屋上菜園の運営者の登録に関する事項は、すべて省令で定める。Bは、登録を受けることができる管理責任者の資格は、屋上の安全を保つために必要な知識及び経験を有する者として、省令で定める。任せること自体は許されます。ただ、どこまで任せてよいかは別の問題です。Aは有効でしょうか。Bとの違いはどこにあるでしょうか。今日持ち帰るのは、任せ方の線です。どこから白紙になるのか。そして、最高裁がその線をどう引いてきたのか。国家公務員法の政治的行為の制限と、教科書検定が、その実例になります。先に答えを言うと、Aは白紙委任として許されない疑いが強く、Bは許されます。分かれ目は、何のために、何を、どこまで任せたかが、法律から読み取れるかどうかです。

問題の立て方——法律そのものを問う

2つの視点(法律→委任→命令の流れ/左=法律の側〔今日〕=そもそも、命令に任せる法律が憲法41条に反しないか/右=命令の側〔別の回〕=任された範囲で命令が作られたか/憲法41条=国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である/憲法では「委任立法」の名で論じる) 図:2つの視点

  • 法律→委任→命令の流れ
  • 左=法律の側〔今日〕=そもそも、命令に任せる法律が憲法41条に反しないか
  • 右=命令の側〔別の回〕=任された範囲で命令が作られたか
  • 憲法41条=国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である
  • 憲法では「委任立法」の名で論じる

最初に、問題の立て方をそろえます。法規命令に関する問題は、2か所で起こります。1か所目は、任せている法律そのものです。この法律は、命令にここまで任せて、憲法に反しないのか。2か所目は、任された命令です。命令は、法律が任せた範囲の内側で作られているのか。今日は1か所目だけです。命令が範囲を超えたかどうかは、別の問題として、後の回で扱います。ここを混ぜると、答案で何を論じているのか分からなくなります。憲法41条は、国会を、国の唯一の立法機関としています。法律が中身を命令に任せるほど、本来は国会が決めるべきことを、行政が決めることになります。極端に言えば、国会が自分の仕事を手放してしまうのです。この問題を、憲法の回では委任立法と呼びました。行政法では、同じ問題を、命令を作る側から見ます。この命令の根拠になる法律は、憲法の枠に収まっているか、という見方です。前提を確認します。任せること自体は、前に見た筋道で許されます。憲法73条6号のただし書が、罰則すら委任で置けるとしているからです。迅速性や専門性といった、任せる必要も確認しました。問題は、どこまで任せてよいか、これだけです。

白紙委任の禁止——線はどこか

屋上菜園のA・Bを3列で比べる(列=何のために/何を/どこまで/【A】すべて省令で定める=何のために:読み取れない/何を:読み取れない〔登録に関する事項すべて〕/どこまで:読み取れない→白紙委任として憲法41条違反の疑いが強い/【B】管理責任者の資格を、屋上の安全のために必要な知識・経験として省令で定める=何のために:屋上の安全/何を:管理責任者の資格/どこまで:必要な知識及び経験→個別的・具体的な委任〔許される〕) 図:屋上菜園のA・Bを3列で比べる(列=何のために/何を/どこまで/【A】すべて省令で定める=何のために:読み取れない/何を:読み取れない〔登録に関する事項すべて〕/どこまで:読み取れない→白紙委任として憲法41条違反の疑いが強い/【B】管理責任者の資格を、屋上の安全のために必要な知識・経験として省令で定める=何のために:屋上の安全/何を:管理責任者の資格/どこまで:必要な知識及び経験→個別的・具体的な委任〔許される〕)

ここで、冒頭の答えを確かめます。Aの書き方は、なぜ問題なのでしょうか。Aは、登録に関することを全部まとめて省令に任せていますよね。国会は何も決めていない気がします。線の引き方は、憲法の回で見ました。法律が、何のために、何を、どこまで任せるのかを読み取れるなら、個別的、具体的な委任として許されます。それがまったく読み取れない委任が、白紙委任です。白紙委任は、国会が立法という仕事を放棄するもので、憲法41条に反します。

⭐ 論文で書く規範:白紙委任の禁止(規範・憲法41条と判例の積み重ねで立てる) 法律による委任は、何のために・何を・どこまで任せるのかが読み取れる、個別的・具体的な委任でなければならない。白紙委任は憲法41条に反する。 (条文に書かれた要件ではなく、憲法41条の趣旨と判例から立てる規範)

この線を、Aに当てはめます。Aの条文から、何のためにが読み取れるでしょうか。登録に関する事項、としか書いていません。何をも、どこまでも、読み取れません。白紙の委任状に判を押して渡したのと同じです。白紙委任として、憲法41条違反の疑いが強いと言えます。Bはどうでしょう。任せるのは、管理責任者の資格です。何をが、はっきりしています。必要な知識及び経験、という形で、どこまでかも示しています。しかも、屋上の安全を保つために、と、何のためかまで書いています。用件と範囲を書いた委任状を渡したのに近く、個別的、具体的な委任です。

命令に任せるときは、必ず目的まで書かないといけないのですか。そこが大切な点です。後で見るとおり、判例は、条文にそこまで書くことを厳しく求めてはいません。条文だけで読み取れなくても、法律全体の趣旨から、枠が読み取れればよいのです。まずは、枠が読み取れるかどうか、が物差しだと押さえてください。前回の屋上菜園の法律を思い出してください。省令で定める資格を持つ管理責任者を置け、とだけ書いていて、何のための資格かは書いていませんでした。それでも、屋上菜園の運営を登録制にして管理責任者を置かせる、という法律全体の仕組みから、何のための資格かは読み取れます。ですから、白紙委任ではありません。Aは違います。登録制という仕組みから、目的はある程度見えるかもしれません。しかし、登録に関する事項すべて、では、要件も、手続も、取り消しも、何でも省令で決められます。前回の法律は、任せる中身を資格に限っていました。Aは、任せた中身に端がないので、何を任せたのかを、法律のどこからも絞れません。ここが線の内と外です。なぜ白紙委任はいけないのか。理由は、憲法の回で見ました。命令は国会が作ったものではないので、何を任せるかという枠を国会が決めていなければ、誰が実質的に決めたのか分からなくなります。民主的なコントロールが切れるのでした。もう1点。Bのように法律が適切でも、省令が任せた枠を超えれば、その省令は別に違法になります。それは命令の側の問題です。今日の問題は、法律そのものの書き方だけです。

再委任——さらに下へ任せてよいか

再委任の二重の枠(法律=酒税法54条〔帳簿の記載義務の主体と大枠を定め、記載事項の詳細だけを命令に任せる〕→命令=酒税法施行規則61条〔1号〜8号で記載事項を具体的に定める/9号「前各号の外、税務署長の指定する事項」〕→税務署長の指定〔各地方の実状に応じて、残りだけ〕/枠が二重にかかる/再委任は許される。ただし法律の委任の趣旨に反しない範囲で) 図:再委任の二重の枠

  • 法律=酒税法54条〔帳簿の記載義務の主体と大枠を定め、記載事項の詳細だけを命令に任せる〕→命令=酒税法施行規則61条〔1号〜8号で記載事項を具体的に定める/9号「前各号の外、税務署長の指定する事項」〕→税務署長の指定〔各地方の実状に応じて、残りだけ〕
  • 枠が二重にかかる
  • 再委任は許される。ただし法律の委任の趣旨に反しない範囲で

次は、再委任です。法律から命令に任せるのはよいとして、その命令がさらに下の機関に任せることは、できるのでしょうか。判例の事件を見ます。酒税法の帳簿の事件です。酒類の製造者などは、帳簿に一定の事実を記載しなければならず、記載を怠ると罰則がありました。法律は、誰が、何を帳簿に記載するか、という大枠を自分で定めました。そして、記載する事項の詳細だけを、命令に任せたのです。命令である施行規則は、記載事項を1号から8号まで、具体的に書きました。そのうえで9号で、前の各号のほか、税務署長の指定する事項も記載せよ、としました。つまり、残りの部分を、さらに税務署長の指定に任せたのです。

最高裁は、許されるとしました。判旨を見ます。

判例最大判昭33・7・9 刑集12巻11号2407頁

酒税法の帳簿の事件——税務署長の指定への委任 同五四条は、その帳簿の記載等の義務の主体およびその義務の内容たる製造、貯蔵又は販売に関する事実を帳簿に記載すべきこと等を規定し、ただ、その義務の内容の一部たる記載事項の詳細を命令の定めるところに一任しているに過ぎないのであつて、立法権がかような権限を行政機関に賦与するがごときは憲法上差支ないことは、憲法七三条六号本文および但書の規定に徴し明白である。そして、前記酒税法施行規則六一条は、その一号ないし八号において、帳簿に記載すべき事項を具体的且つ詳細に規定しており、同条九号は、これらの規定に洩れた事項で、各地方の実状に即し記載事項とするを必要とするものを税務署長の指定に委せたものであつて、前記酒税法施行規則においてこのような規定を置いたとしても、前記酒税法五四条の委任の趣旨に反しないものであり、違憲であるということはできない。

決め手は、枠が二重にかかっていることです。1つ目の枠は法律です。義務の主体と大枠を法律が定め、任せたのは記載事項の詳細だけでした。2つ目の枠は施行規則です。大半を自分で具体的に書き、残りだけを、各地方の実状に応じた指定に任せました。どちらの段階でも、何を、どこまで任せるのかが見えています。ですから、再委任は、法律の委任の趣旨に反しない範囲なら許されます。憲法73条6号が出てくるのは、前に見たつながりです。法律から命令への委任が許される以上、命令から下への委任も、一切禁止とはできません。受け取った範囲を全部下へ渡す再委任では、命令の段階の枠が、まるごと抜けます。法律が予定していない機関が、何の具体化もないまま中身を決めることになり、誰が実質的に決めたのか分からなくなります。法律の側から見れば、実質的に白紙委任と同じです。判例が実際に認めたのは、大半を自分で具体化して残りだけを任せた事案です。全部を丸ごと流す再委任は、法律の委任の趣旨に反するおそれが強いと考えられます。

国家公務員法102条1項はなぜ争われてきたか

国家公務員法102条1項の3層構造(法律=職員は…人事院規則で定める政治的行為をしてはならない〔骨組みだけ〕→人事院規則=何が政治的行為かを定める〔中身は丸ごとここ〕→制裁=懲戒処分〔組織内の規律〕・刑罰〔犯罪の成立〕/争点になる3つの理由=1 禁止の中身が丸ごと規則に委ねられる/2 懲戒と刑罰を区別せず、同じ規則に任せている/3 禁じられるのは政治活動の自由という重い自由/今日=任せ方だけ。政治的行為を禁じること自体の合憲性は憲法の回で扱った) 図:国家公務員法102条1項の3層構造

  • 法律=職員は…人事院規則で定める政治的行為をしてはならない〔骨組みだけ〕→人事院規則=何が政治的行為かを定める〔中身は丸ごとここ〕→制裁=懲戒処分〔組織内の規律〕・刑罰〔犯罪の成立〕
  • 争点になる3つの理由=1 禁止の中身が丸ごと規則に委ねられる
  • 2 懲戒と刑罰を区別せず、同じ規則に任せている
  • 3 禁じられるのは政治活動の自由という重い自由
  • 今日=任せ方だけ。政治的行為を禁じること自体の合憲性は憲法の回で扱った

白紙委任の主張が、いちばん争われてきた条文があります。国家公務員法102条1項です。条文の骨格だけ、見ます。

条文国家公務員法102条1項

国家公務員法第102条第1項 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

暗記は要りません。骨格は、職員は、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない、です。法律は、政治的行為をしてはならないという骨組みだけを書きました。何が政治的行為なのかという中身は、人事院規則に任せています。さらに、この禁止に違反すると、懲戒処分の対象にもなりますし、刑罰の対象にもなりえます。疑われる理由は3つです。1つ目。禁止の中身が、丸ごと規則に委ねられています。2つ目。組織内の規律である懲戒と、犯罪の成立である刑罰を区別せず、同じ規則に任せています。3つ目。禁じられるのは、政治活動の自由という重い自由です。懲戒は、組織の中の処分です。刑罰は違います。何が犯罪になるかは、国会が法律で決めなければならない、という罪刑法定主義の要請がかかります。その刑罰の線まで、懲戒と同じ規則にまとめて任せれば、犯罪の線を規則が引くことになります。しかも、制限されるのが重い自由ほど、どこまで制限するかを国会自身が見える形で決めておく必要が大きくなります。後で見る課長補佐の事件の判決も、政治活動の自由の重要性を、読み方を絞る理由に挙げています。つまり、何が犯罪になるのかという、国会が決めるべき中心部分を、規則を作る側が決めているのではないか、という疑いです。ここで、憲法の回との切り分けをします。政治的行為を禁じること自体が、表現の自由との関係で許されるのかは、憲法の回で見ました。郵便局員の選挙ポスターの猿払事件と、年金審査官の機関紙配布の堀越事件の話です。今日はそこへは入りません。今日問うのは、禁止の中身を人事院規則に任せるという、任せ方が憲法41条に反しないか、だけです。

判例の流れ——規則の範囲から、猿払、課長補佐の事件へ

判例の流れ(時系列)(昭33最判=人事院規則は102条1項の委任の範囲を逸脱していない〔短い先例〕→昭49最大判・猿払事件=多数意見:合理的な解釈で委任の対象を読み取る/反対意見4人:刑罰の構成要件の委任としては無効→平24最判=「政治的行為」を実質的なおそれのあるものに限定して読み、白紙委任に当たらないことは明らか/手口=文言を絞って読んで、白紙委任でないと言う) 図:判例の流れ

  • 時系列
  • (昭33最判=人事院規則は102条1項の委任の範囲を逸脱していない〔短い先例〕→昭49最大判・猿払事件=多数意見:合理的な解釈で委任の対象を読み取る/反対意見4人:刑罰の構成要件の委任としては無効→平24最判=「政治的行為」を実質的なおそれのあるものに限定して読み、白紙委任に当たらないことは明らか/手口=文言を絞って読んで、白紙委任でないと言う)

判例の流れを、先に見取り図で示します。最初に、規則は委任の範囲内とした短い先例があります。次に、憲法の回で見た郵便局員の選挙ポスターの事件、猿払事件で、委任について意見が割れました。最後に、課長補佐の機関紙配布の事件で、限定して読む形が明示されました。最初の先例は、国家公務員法違反の事件です。最高裁は、人事院規則が、102条1項に基づいて、職責に照らして必要な政治的行為の制限を定めたもので、任された範囲を逸脱していない、としました。判断したのは、規則が範囲を超えたかという、命令の側の問題です。法律の任せ方が白紙委任かどうかは、正面からは判断していません。ですから、今日の本題は、次の猿払事件からです。本題は、郵便局員の選挙ポスターの事件です。大法廷の判決で、委任について、多数意見と反対意見が割れました。まず多数意見です。

判例最大判昭49・11・6 刑集28巻9号393頁

郵便局員の選挙ポスターの事件——多数意見 なお、政治的行為の定めを人事院規則に委任する国公法一〇二条一項が、公務員の政治的中立性を損うおそれのある行動類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任するものであることは、同条項の合理的な解釈により理解しうるところである。そして、そのような政治的行為が、公務員組織の内部秩序を維持する見地から課される懲戒処分を根拠づけるに足りるものであるとともに、国民全体の共同利益を擁護する見地から科される刑罰を根拠づける違法性を帯びるものであることは、すでに述べたとおりであるから、右条項は、それが同法八二条による懲戒処分及び同法一一〇条一項一九号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に委任するものであるからといつて、そのことの故に、憲法の許容する委任の限度を超えることになるものではない。

多数意見の読み方は、こうです。条文には、人事院規則で定める、としか書いていません。しかし、条文を合理的に解釈すれば、委任の対象は、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型を具体的に定めること、と分かる、と言うのです。枠は、解釈で読み取れます。だから、懲戒と刑罰を一様に委任していても、憲法の許容する限度を超えない、という結論になります。これに対し、4人の裁判官の反対意見がありました。

判例最大判昭49・11・6 刑集28巻9号393頁 裁判官大隅健一郎ほか3名の反対意見

郵便局員の選挙ポスターの事件——反対意見 まず一般論として、国会が、法律自体の中で、特定の事項に限定してこれに関する具体的な内容の規定を他の国家機関に委任することは、その合理的必要性があり、かつ、右の具体的な定めがほしいままにされることのないように当該機関を指導又は制約すべき目標、基準、考慮すべき要素等を指示してするものであるかぎり、必ずしも憲法に違反するものということはできず、また、右の指示も、委任を定める規定自体の中でこれを明示する必要はなく、当該法律の他の規定や法律全体を通じて合理的に導き出されるものであつてもよいと解される。……それゆえ、国公法一〇二条一項における前記のごとき無差別一体的な立法の委任は、少なくとも、刑罰の対象となる禁止行為の規定の委任に関するかぎり、憲法四一条、一五条一項、一六条、二一条及び三一条に違反し無効であると断ぜざるをえないのである。

反対意見も、委任そのものを否定してはいません。合理的な必要があり、目標、基準、考慮すべき要素が指示されていれば、よい。しかも、その指示は、条文自体に書かなくても、法律全体から導けてもよい、と言っています。ここは多数意見と共通の土台です。分かれたのは、刑罰です。公務員の規律としての委任は許される。しかし、刑罰の対象になる禁止行為を、懲戒と区別せず一体として規則に委ねた部分は、刑罰の構成要件の委任としては無効だ、というのです。理由は、刑罰は懲戒と目的も効果も違うから、より厳格な基準の指示が要る、というものです。

多数意見と反対意見の対比(多数意見=条項を合理的に解釈して、委任の対象を読み取る/懲戒と刑罰を区別して考えるか:区別せず一様に委任してよい/結論:憲法の許容する委任の限度内/反対意見4人=刑罰の対象となる禁止行為は、法律側に基準の指示が要る/懲戒と刑罰を区別して考えるか:区別する/結論:刑罰の構成要件の委任としては憲法41条等に違反して無効/共通の土台=指示は法律全体から導けてもよい) 図:多数意見と反対意見の対比

  • 多数意見=条項を合理的に解釈して、委任の対象を読み取る
  • 懲戒と刑罰を区別して考えるか:区別せず一様に委任してよい
  • 結論:憲法の許容する委任の限度内
  • 反対意見4人=刑罰の対象となる禁止行為は、法律側に基準の指示が要る
  • 懲戒と刑罰を区別して考えるか:区別する
  • 結論:刑罰の構成要件の委任としては憲法41条等に違反して無効
  • 共通の土台=指示は法律全体から導けてもよい

同じ条文なのに、結論が分かれたのはなぜですか。見ている物差しが違うからです。多数意見は、条文を合理的に解釈すれば、委任の枠は読み取れる、と考えます。反対意見は、刑罰だから、条文の側にもっとはっきりした基準の指示が要る、と考えます。しかも、刑罰の部分では法律全体を読んでも基準が見つからない、としました。この対立が、今日の核心の1つです。次が、課長補佐の機関紙配布の事件です。憲法の回で、年金審査官が無罪になった堀越事件を見ました。そのとき、同じ日に、同じ枠組みで判断されたもう一つの事件があり、管理職的な地位にあった被告人は有罪だった、と触れました。それがこの事件です。課長補佐が、政党の機関紙を配布して、起訴されました。白紙委任の主張を明示的に退けたのは、堀越事件ではなく、こちらの事件です。弁護側は、政治的行為の人事院規則への委任は白紙委任で、憲法41条などに反する、と主張しました。最高裁の判断です。

判例最判平24・12・7 刑集66巻12号1722頁

課長補佐の機関紙配布の事件——白紙委任に当たらないことは明らか このような本法102条1項の文言,趣旨,目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え,同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると,同項にいう「政治的行為」とは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し,同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。……また,既にみたとおり,本法102条1項が人事院規則に委任しているのは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為の行為類型を規制の対象として具体的に定めることであるから,同項が懲戒処分の対象と刑罰の対象とで殊更に区別することなく規制の対象となる政治的行為の定めを人事院規則に委任しているからといって,憲法上禁止される白紙委任に当たらないことは明らかである。

順に読みます。まず、政治的行為とは、政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるもの、と絞って読みます。この言い回しは、憲法の回の堀越事件で見た限定の定式と同じです。次に、102条1項が委任したのは、そのような行為の類型を具体的に定めることだ、とします。だから、懲戒と刑罰を区別せずに委任していても、白紙委任に当たらないことは明らかだ、という結論です。猿払事件の多数意見との違いは、どこまで読み込んだかです。多数意見は、委任の対象を、合理的な解釈で読み取りました。ただ、処罰される政治的行為の範囲そのものを絞ったわけではありません。憲法の回で見たとおり、範囲を絞る限定解釈は、こちらの事件と堀越事件で出てきたものです。この判決は、実質的に認められる、という限定を、はっきり言葉にしました。この事件は有罪で、上告は棄却されています。最高裁の手口は、条文を絞って読んで、白紙委任ではないと言う、ことです。

判例の手口と、利率の事件

判例の手口(条文だけ見ると基準の指示が見えない→趣旨・目的・法律全体から委任の枠を読み取る→枠が読み取れるから白紙委任ではない/酒税法の事件=法律が義務の大枠を定め、詳細だけ任せる/猿払=合理的な解釈で委任の対象を読み取る/平24=「政治的行為」そのものを絞って読む/利率の事件=制度の趣旨から枠を読む/共通=法律全体の趣旨から委任の枠が読み取れるか/条文に明示の限定がなくても、解釈で枠を読み取れば足りる) 図:判例の手口

  • 条文だけ見ると基準の指示が見えない→趣旨・目的・法律全体から委任の枠を読み取る→枠が読み取れるから白紙委任ではない
  • 酒税法の事件=法律が義務の大枠を定め、詳細だけ任せる
  • 猿払=合理的な解釈で委任の対象を読み取る
  • 平24=「政治的行為」そのものを絞って読む
  • 利率の事件=制度の趣旨から枠を読む
  • 共通=法律全体の趣旨から委任の枠が読み取れるか
  • 条文に明示の限定がなくても、解釈で枠を読み取れば足りる

判例の手口を、整理します。条文だけ見ると、人事院規則で、としか書いていません。基準の指示は見えません。そこで、趣旨や目的、法律全体から、委任の枠を読み取ります。枠が読み取れるので、白紙委任ではない。こう進みます。つまり、条文に明示の限定がなくても、解釈で枠を読み取れれば足りる、というのが判例の姿勢です。もう1つ、この姿勢がよく出ている事件を、軽く見ます。退職一時金の利子の事件です。ずっと前に旧電電公社を退職して、退職一時金を受け取った人が、後に年金を受けられる立場になりました。法律の附則は、重複して受けた分を、利子を付けて返還させる仕組みを定め、その利率を政令に任せていました。下級審は、利率を決める基準も示さずに、包括的に政令に任せたもので無効だ、としました。判旨には、予定運用収入という言葉が出てきます。年金の財源を運用して得られると見込まれる収入のことです。

判例最判平27・12・14 民集69巻8号2348頁

退職一時金の利子の事件——利率を政令に任せた附則 このような同条の趣旨等に照らすと,同条4項は,退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について,予定運用収入に係る利率との均衡を考慮して定められる利率とする趣旨でこれを政令に委任したものと理解することができる。……したがって,国公共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1項は,退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず,憲法41条及び73条6号に違反するものではないと解するのが相当である。

ここで1問です。条文に、予定運用収入との均衡、とは書いていません。それなのに、なぜ白地で包括的な委任ではない、と言えたのでしょうか。重複支給の調整であり、予定運用収入に相当する額を付けて返してもらう、という制度の趣旨から、利率は、予定運用収入に係る利率との均衡で定める趣旨だと読み取りました。条文にない限定を、趣旨から補ったわけです。4つの事件の共通点は、法律全体の趣旨から、委任の枠が読み取れるかどうかです。酒税法の事件は、法律が義務の大枠を定め、詳細だけを任せていました。猿払は、条文を合理的に解釈して、委任の対象を読み取りました。課長補佐の事件は、さらに、政治的行為そのものを絞って読みました。利率の事件は、制度の趣旨から枠を読みました。

教科書検定——委任か執行かの境目

教科書検定の三層(法律=学校教育法34条1項〔検定を経た教科用図書を使用しなければならない〕=短い/省令=教科用図書検定規則〔検定の手続〕/告示=教科用図書検定基準〔審査の内容・基準〕/法律の条文は短いのに、制度の中身はほとんど省令・告示にある/中学校・高等学校は34条を準用) 図:教科書検定の三層

  • 法律=学校教育法34条1項〔検定を経た教科用図書を使用しなければならない〕=短い
  • 省令=教科用図書検定規則〔検定の手続〕
  • 告示=教科用図書検定基準〔審査の内容・基準〕
  • 法律の条文は短いのに、制度の中身はほとんど省令・告示にある
  • 中学校・高等学校は34条を準用

最後の実例は、教科書検定です。その前に、前回の復習です。委任が要る中身が、執行命令の形で定められると、何が抜け落ちるのでしたか?委任の枠が見えなくなる、でした。委任命令は、法律の委任を受けて、権利義務の中身を定めます。法律が引いた枠があるので、はみ出せば条文と見比べて分かります。執行命令は、法律を実施する手続や形式の細目で、個別の委任なしに定められます。こちらには、見比べる枠がありません。その実例が、これから見る教科書検定です。条文を見ます。

条文学校教育法34条1項

学校教育法第34条第1項 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。

法律に書いてあるのは、これだけです。検定を経た教科書を使え。中学校と高等学校は、この条文を準用しています。どんな観点で、どんな基準で検定するのかは、法律に書いていません。それは、検定規則という省令と、検定基準という告示が定めています。条文は一文なのに、制度の中身は、ほとんど下位の法令にあるのです。高等学校用の教科書の検定をめぐって争われた事件です。最高裁は、この仕組みに法律の委任があるかを判断しました。なお、事案は昔の検定なので、判旨は当時の学校教育法の条文で書かれています。判旨の二一条一項が、今の34条1項にあたります。高校への準用は、当時は五一条、今は62条です。八八条は、今の88条とは別の規定です。判旨に出てくる旧検定規則、旧検定基準も、当時の検定規則と検定基準のことです。

判例最判平5・3・16 民集47巻5号3483頁

教科書検定の事件——検定の根拠と、審査の基準を定める省令・告示 学校教育法五一条によって高等学校に準用される同法二一条一項は、文部大臣が検定権限を有すること、学校においては検定を経た教科書を使用する義務があることを定めたものであり、検定の主体、効果を規定したものとして、本件検定の根拠規定とみることができる。……右旧検定規則、旧検定基準は、前記のとおり、右の関係法律から明らかな教科書の要件を審査の内容及び基準として具体化したものにすぎない。そうだとすると、文部大臣が、学校教育法八八条の規定(「この法律に規定するもののほか、この法律施行のため必要な事項で、地方公共団体の機関が処理しなければならないものについては政令で、その他のものについては監督庁が、これを定める」)に基づいて、右審査の内容及び基準並びに検定の施行細則である検定の手続を定めたことが、法律の委任を欠くとまではいえない。

教科書検定の判旨と注意点(判旨の流れ=1 34条1項〔旧21条1項〕は検定の主体と効果を定めた根拠規定/2 審査の内容・基準は検定規則・検定基準が定める/3 教科書の要件〔正確・中立公正/学校の目的・教育の目標・教科の内容に合う/心身の発達の段階に応じる/児童・生徒が使いやすい〕は教育基本法・学校教育法から明らか→規則・基準はその具体化/4 旧88条〔施行に必要な事項は監督庁が定める〕に基づく→法律の委任を欠くとまではいえない/注意1=最高裁は執行命令とも委任命令とも言っていない/注意2=執行命令の体裁でも中身は審査の基準→委任と執行の線が引きにくく、枠が確かめにくい/評価=法律の条文に基準がほとんど無く、白紙委任に近づく危うさ〔判例の結論ではない〕) 図:教科書検定の判旨と注意点

  • 判旨の流れ=1 34条1項〔旧21条1項〕は検定の主体と効果を定めた根拠規定
  • 2 審査の内容・基準は検定規則・検定基準が定める
  • 3 教科書の要件〔正確・中立公正/学校の目的・教育の目標・教科の内容に合う/心身の発達の段階に応じる/児童・生徒が使いやすい〕は教育基本法・学校教育法から明らか→規則・基準はその具体化
  • 4 旧88条〔施行に必要な事項は監督庁が定める〕に基づく→法律の委任を欠くとまではいえない
  • 注意1=最高裁は執行命令とも委任命令とも言っていない
  • 注意2=執行命令の体裁でも中身は審査の基準→委任と執行の線が引きにくく、枠が確かめにくい
  • 評価=法律の条文に基準がほとんど無く、白紙委任に近づく危うさ〔判例の結論ではない〕

判旨の流れを整理します。まず、法律の条文は、検定の主体と効果を定めた、検定の根拠規定とみることができる。次に、審査の内容や基準は、検定規則と検定基準が定めている。ただし、教科書がどんなものでなければならないかは、法律から読み取れる、とします。内容が正確で、中立・公正であること。学校の目的や教育の目標、教科の内容に合っていること。子どもの心身の発達の段階に応じていること。そして、児童や生徒が使いやすいこと。こうした要件は、教育基本法と学校教育法の関係する条文から、おのずと明らかだ、というのです。検定規則と基準は、それを審査の基準に具体化したものにすぎない。最後に、八八条です。この法律の施行に必要な事項は監督庁が定める、という一般的な規定で、文部大臣はこれに基づいて検定規則と基準を定めた、と見ます。だから、法律の委任を欠くとまではいえない、と結論しました。ここでも、法律全体から枠を読み取っています。注意点が2つあります。1つ目。最高裁は、この規則と基準を、執行命令とも委任命令とも言っていません。委任を欠くとまではいえない、とやわらかく言っただけです。ですから、最高裁が執行命令と判断した、とは言えません。2つ目。ここで前回とつなげます。検定規則や基準は、手続や細目を定めた、執行命令の体裁に見えます。しかし中身は、検定に合格できるかを決める審査の基準です。出版社の権利や利益に関わる中身です。つまり、委任命令と執行命令は、実際には線を引きにくいのです。

執行命令の形で定められていると、個別の委任は要らない建前なので、法律のどこにその枠があるのかを、そもそも問われにくくなります。何を、どこまで任せたのかという枠が見えなくなり、命令の中身がどの法律の枠に支えられているのかを、確かめられなくなるおそれがあります。前回の、委任の枠が見えなくなる、の実例です。白紙委任との関係も見ておきます。最高裁は、委任を欠くとまではいえない、としました。白紙委任だとは言っていません。枠は、関係する法律から読み取れる教科書の要件にある、という理解です。ただ、検定の基準そのものは、法律の条文にほとんど書かれておらず、省令と告示が中身を作っています。そのため、法律の側から見ると、白紙委任に近づく危うさがある、という評価もできます。判例の結論ではなく、仕組みへの評価です。なお、教科書検定の裁量や審査の中身は、別の回で扱います。

判例は緩い、それでも論点を立てる意味

判例は緩い、それでも立てる意味(事実=これまでの最高裁判決に、白紙委任を理由に法律を違憲無効とした例は見当たらない〔猿払の反対意見4人は少数〕/判例が緩い理由=1 委任が必要な場面が多い/2 条文を絞って読めば枠が見つかることが多い/3 人事院のように独立性・中立性のある機関への委任は濫用のおそれが小さいと見られる〔反対意見が言及した事情〕/批判=委任の中身は、読み手が条文から予測できる程度に法律が決めておくべき。条文で枠を明示するのが本来の姿/答案の動き方=委任条項の文言と法律全体から、何のために・何を・どこまでが読み取れるか→読み取れれば合憲/新規の「すべて命令で定める」型は、限定解釈で絞れるかが勝負/刑罰・重い自由に関わる委任は、より厳格に見る余地) 図:判例は緩い、それでも立てる意味

  • 事実=これまでの最高裁判決に、白紙委任を理由に法律を違憲無効とした例は見当たらない〔猿払の反対意見4人は少数〕
  • 判例が緩い理由=1 委任が必要な場面が多い
  • 2 条文を絞って読めば枠が見つかることが多い
  • 3 人事院のように独立性・中立性のある機関への委任は濫用のおそれが小さいと見られる〔反対意見が言及した事情〕
  • 批判=委任の中身は、読み手が条文から予測できる程度に法律が決めておくべき。条文で枠を明示するのが本来の姿
  • 答案の動き方=委任条項の文言と法律全体から、何のために・何を・どこまでが読み取れるか→読み取れれば合憲
  • 新規の「すべて命令で定める」型は、限定解釈で絞れるかが勝負
  • 刑罰・重い自由に関わる委任は、より厳格に見る余地

ここまで見て、気づいたことがあると思います。最高裁が、白紙委任を理由に法律を違憲とした例はあるでしょうか。出てきた判例は、どれも合憲でした。これまでの最高裁判決では、白紙委任を理由に法律を違憲無効とした例は見当たりません。国家公務員法102条1項でも、無効とした4人の反対意見は、少数にとどまりました。なぜ判例は緩いのでしょうか。理由は3つ考えられます。1つ目。委任が必要な場面が多い、ということ。憲法の回と前回で、迅速性、専門性、中立性を見ました。2つ目。条文を絞って読めば、枠が見つかることが多い、ということ。3つ目。人事院のように、独立性や中立性のある機関への委任は、濫用のおそれが小さいと見られやすいことです。政治から距離を置いた機関なら、規則がほしいままに作られるおそれは小さい、という考え方です。なお、3つ目は、猿払の反対意見が、公務員関係の規律としての委任を認める理由の中で触れた事情です。多数意見の根拠として示されたものではありません。

それでも、論点として立てる価値は残ります。判例の緩さには批判があるからです。法律による行政の原理から見れば、委任の中身は、読み手が条文から予測できる程度に法律が決めておくべきです。条文の側で枠を明示するのが、本来の姿です。今の判例の緩さは、その姿から離れている、という批判です。答案での動き方を整理します。委任条項の文言と、法律全体の趣旨から、何のために、何を、どこまでが読み取れるかを検討します。読み取れれば、個別的、具体的な委任として合憲です。まったく読み取れなければ、白紙委任です。問題文に、すべて命令で定める、型の新しい条文が出たら、限定解釈で絞れるかが勝負になります。絞れるなら合憲、絞れないなら憲法41条違反です。刑罰や重い自由の制限に関わる委任は、より厳格に見る余地があります。猿払の反対意見の筋です。ただし、多数意見と、課長補佐の事件は、懲戒と刑罰を殊更には区別していません。現に違憲判断がなくても、白紙委任の線は、憲法上の限界として存在します。ここは、論文で論点になりうるところです。

今日のまとめ

今日の地図(保存版)(1 今日の問題=命令に任せる法律の側が憲法41条に反しないか。命令の出来ばえは別/2 白紙委任〔すべて命令で〕は不可。何のために・何を・どこまでが読み取れる個別的・具体的な委任なら可/3 再委任も、法律の委任の趣旨に反しない範囲なら可〔酒税法の帳簿の事件〕/4 国公法102条1項=禁止の中身を人事院規則に。猿払は合理的解釈で許容、反対意見4人は刑罰部分は無効。平24は限定して読み、白紙委任に当たらないことは明らか/5 判例は文言を絞り、法律全体の趣旨から枠を読む。明示の限定は厳しく求めない。違憲無効とした例は見当たらない。批判=委任の中身は条文から予測できる程度に法律で決めるべき/6 教科書検定=法律は一語、中身は省令・告示。委任か執行か曖昧だと委任の枠が見えなくなる) 図:今日の地図

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  • (1 今日の問題=命令に任せる法律の側が憲法41条に反しないか。命令の出来ばえは別/2 白紙委任〔すべて命令で〕は不可。何のために・何を・どこまでが読み取れる個別的・具体的な委任なら可/3 再委任も、法律の委任の趣旨に反しない範囲なら可〔酒税法の帳簿の事件〕/4 国公法102条1項=禁止の中身を人事院規則に。猿払は合理的解釈で許容、反対意見4人は刑罰部分は無効。平24は限定して読み、白紙委任に当たらないことは明らか/5 判例は文言を絞り、法律全体の趣旨から枠を読む。明示の限定は厳しく求めない。違憲無効とした例は見当たらない。批判=委任の中身は条文から予測できる程度に法律で決めるべき/6 教科書検定=法律は一語、中身は省令・告示。委任か執行か曖昧だと委任の枠が見えなくなる)

冒頭の問いに答えます。Aは、白紙委任として憲法41条違反の疑いが強い書き方です。Bは、何のために、何を、どこまでが読み取れる、個別的、具体的な委任で、許されます。今日の内容を整理します。1つ目。今日の問題は、命令に任せる法律の側が、憲法41条に反しないかです。命令が範囲を超えたかは、別の問題です。2つ目。すべて命令で定める、という白紙委任は許されません。何のために、何を、どこまで任せるかが読み取れる、個別的、具体的な委任なら許されます。3つ目。再委任も、法律の委任の趣旨に反しない範囲なら許されます。酒税法の帳簿の事件が、その実例です。4つ目。国家公務員法102条1項は、禁止の中身を人事院規則に任せています。猿払事件の多数意見は、合理的な解釈で、委任の対象を読み取りました。反対意見の4人は、刑罰の部分は無効としました。課長補佐の事件では、限定して読み、白紙委任に当たらないことは明らかとしました。5つ目。判例は、文言を絞り、法律全体の趣旨から枠を読みます。明示の限定は厳しく求めません。これまで違憲無効とした例は見当たりませんが、委任の中身は条文から予測できる程度に法律で決めておくべきだ、という批判があります。6つ目。教科書検定は、法律は一文で、中身は省令と告示にあります。委任か執行かが曖昧だと、委任の枠が見えなくなります。

参照条文

  • 国家公務員法102条1項
  • 学校教育法34条1項

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