組合契約の意義と業務執行・組合代理
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第5章 契約 #279/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
3人で始めた店の契約は、誰が結ぶのか
図:冒頭の設例 友人A・B・Cの3人がお金を出し合ってキッチンカーを始めた
記号を付けます。3人の友人をA、B、Cとし、仕入れ先をDとします。前回で、雇用、請負、委任、寄託と、役務を提供する契約は終わりました。今日からは、複数の人が一緒に事業をする契約を見ます。3人で始めたこの店は、民法では組合と呼ばれます。先に方向だけ言います。BとCの分まで契約を結べるのは、2人の代理権を持つ人です。その代理権が誰にあるかは、運営を任された人がいるかどうかで変わります。条文は670条の2です。
組合契約の成立 出資と共同の事業
図:組合契約の成立
- 667条
- ①各当事者が出資をする ②共同の事業を営むことを約する→約束だけで成立(諾成)。出資は金銭に限らず労務でもよい(2項)。例=Aは現金30万円・Bは調理器具・Cは調理と運転の労務。
1つめは、組合契約の成立です。条文です。
条文民法667条
民法第667条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。 2 出資は、労務をその目的とすることができる。
読み方です。成立に要るのは2つです。各当事者が出資をすること。そして、共同の事業を営むことです。出資とは、事業のために出すものです。たとえば、Aは現金30万円、Bは調理器具を出します。私は車を運転して、料理を作るだけで、お金は出せません。それでも仲間に入れますか?入れます。2項です。出資は、労務を目的にできます。Cが、調理と運転という労務を出資する約束でも、組合契約は成り立ちます。約束だけで成立します。物の引渡しは要りません。この契約は、諾成、双務、有償の契約と説明されます。各自が出資する義務を負い合うので、双務です。こうして、複数の人が出資して共同の事業を営む約束をすると、そこに共同の事業体ができます。この事業体を、組合と呼びます。身近な例では、法人にしていない法律事務所の共同経営も、同じです。
図:今日の地図
- ①組合契約の成立(667条)②団体の3つの形のなかでの組合
- ③契約総則が当てはまらない3点(667条の2・667条の3)④中の決め方=決定と執行(670条)⑤外との契約=組合代理(670条の2)⑥運営を任された人の有無で整理する表
- ⑦委任の規定の準用(671条)
- 軸=誰が決め、誰が動き、誰が代理するか
ここで、今日の道筋を示します。まず、組合が団体のなかでどこにいるかを見ます。次に、組合には、ふつうの契約のルールが当てはまらない場面があります。3点あります。そのあと、組合の中の決め方と、外との契約の結び方を見ます。この2つは、運営を任された人がいるかどうかで場合分けします。最後に、1枚の表にまとめます。軸は1本です。誰が決めるか、誰が動くか、誰が代理するか。
団体の3つの形のなかの組合
図:団体の3つの形
- 社団法人=法人格あり/団体を挟んで間接的につながる/団体に加わるだけ(既存の構成員一人一人の同意は不要)
- 権利能力なき社団=法人格なし/団体を挟んで間接的/団体に加わるだけ/総有
- 組合=法人格なし/構成員どうしが個別の契約で直接つながる/既存の全員との契約が要る=全員の同意/合有
組合を、団体の3つの形のなかに置きます。社団法人、権利能力なき社団、そして組合です。3つのうち、法人格があるのは、社団法人だけです。権利能力なき社団と組合には、法人格がありません。法人格がない団体は、2つあるんです。この2つを分ける軸は、つながり方です。権利能力なき社団は、写真サークルのように、団体を挟んで、部員が間接的につながっています。組合は、団体を挟みません。組合員どうしが、個別の契約で、直接つながっています。社団は、団体に加わるだけで、既にいる構成員一人一人の同意は要りません。組合は、既にいる全員と契約を結ぶことになるので、全員の同意が要ります。財産の持ち方も、2つで分かれます。組合は合有、権利能力なき社団は総有でした。合有では、組合員一人一人に、潜在的な持分があります。ふつうの共有なら、自分の持分は自由に処分できますし、いつでも財産を分けてくれと求められます。組合では違います。持分を処分しても、組合や取引の相手には対抗できません。清算の前に、財産を分けてくれと求めることもできません。組合の財産は、組合の目的である共同の事業を進めるための手段だからです。一人の都合で動かせると、手段として使えなくなります。抜けるときには、自分の持分を払い戻してもらえます。総有では、構成員に持分そのものがありません。構成員は団体とつながり、入れ替わる前提なので、抜けても返ってくる取り分はありません。
条文の668条は、組合の財産を「共有」と書きます。ただ、いま見たとおり、ふつうの共有とは扱いが違うので、講学上、つまり学問の上では、区別して合有と呼びます。組合の財産の中身は、次の回で扱います。ここで1つ足します。組合は、契約であり、同時に団体でもあります。667条の契約が、団体をつくるのです。だからこそ、組合では、ふつうの契約のルールがそのままは当てはまらない場面が出てきます。次の節で、3つの場面を見ます。
契約総則が当てはまらない3点
図:定着の問い(533条)。同時履行の抗弁権とは、どんな権利だったか。
復習を1問です。同時履行の抗弁権とは、どんな権利でしたか?双務契約で、相手が自分の債務の履行を提供するまで、自分の債務の履行を拒める権利です。533条でした。売買なら、相手が代金を出すまで、商品を渡さない、と言えました。組合では、これが言えません。条文です。
条文民法667条の2
民法第667条の2 第五百三十三条及び第五百三十六条の規定は、組合契約については、適用しない。 2 組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。
図:不適用① 同時履行・危険負担
- 667条の2第1項
- 533条(同時履行の抗弁権)と536条(危険負担)は適用しない。例=A・B・Cが100万円ずつ出す約束→Bが出さなくても、Cは「Bが出すまで自分も出さない」とは言えない。他の組合員の出資が履行不能でも、自分の出資の履行は拒めない。
1項から読みます。533条と536条は、組合契約には適用しません。536条は、危険負担でした。ふつうの双務契約では、一方の債務が履行できなくなったとき、もう一方は、自分の債務を拒めました。例です。A、B、Cの3人が、100万円ずつ出す約束をしました。Bだけが、出しません。Cは、Bが出すまで、自分も出さない、と言えないんですか?言えません。533条は適用しないからです。Bの出資が履行できなくなったときも、Cは、自分の出資を拒めません。536条を適用しないからです。533条が使えるとすると、Bが出さないあいだ、AもCも、自分の出資を止められます。組合には、事業に使うお金が集まりません。そこで、組合の活動のためには、組合員の間の公平さよりも、組合の財産を確保することを優先すべきだ、と説明されています。2項です。他の組合員が債務を履行しないことを理由に、組合契約を解除することはできません。催告解除は、541条でした。ふつうの双務契約なら、解除できる場面でも、組合では解除できません。
解除はできません。できるだけ団体としての活動を続けさせるべきだから、と説明されています。Bが出さないからといって、Cが組合契約を解除して、キッチンカーの事業をほどくことはできません。出さない組合員と離れる道は、解除とは別に用意されています。それは、別の回で扱います。
条文民法667条の3
民法第667条の3 組合員の一人について意思表示の無効又は取消しの原因があっても、他の組合員の間においては、組合契約は、その効力を妨げられない。
図:不適用② 意思表示の無効・取消し
- 667条の3
- 組合員の1人に無効・取消しの原因があっても、他の組合員の間では組合契約は効力を妨げられない。例=Cがだまされて組合に加わった→Cは自分の意思表示を取り消せる
- AとBの間の組合契約は残る。
3つめです。667条の3です。例です。Cが、だまされて、組合に加わったとします。Cは、だまされたことを理由に、自分の意思表示を取り消せます。ただし、AとBの間の組合契約は、有効なまま残ります。組合では、全体が消えることはありません。取り消した人の分だけが外れて、ほかの組合員の間の契約は、妨げられません。これも、できるだけ団体としての活動を続けさせるべきだから、と説明されています。
図:契約総則が当てはまらない3点
3点を並べます。1つめ、533条と536条は適用しない。2つめ、他の組合員の債務不履行を理由に、解除できない。3つめ、1人の無効や取消しは、ほかの組合員の間の契約を妨げない。どれも、組合契約を、できるだけ続ける方向のルールです。
組合の中の決め方 決定と執行
図:内部関係① 業務執行者がいない場合
- 決定=組合員の過半数(670条1項)/執行=各組合員(同)/常務=各組合員が単独で(5項)・完了前に他の組合員が異議を述べたときは除く
- 例=新しい車の購入は常務でない→過半数で決定/食材の細かい発注量の調整は常務→単独で
ここから、組合の中の話です。組合の業務には、2つの動きがあります。決めることと、実際に動くことです。決定と執行です。条文です。
条文民法670条
民法第670条 組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。 2 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる。 3 前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。 4 前項の規定にかかわらず、組合の業務については、総組合員の同意によって決定し、又は総組合員が執行することを妨げない。 5 組合の常務は、前各項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。
まず1項です。誰にも運営を任せていない場合の、原則です。業務は、組合員の過半数で決めます。そして、各組合員が、それを執行します。決定は過半数、執行は各自です。例です。キッチンカーを、新しい車に買い替えるかどうか。A、B、Cの3人のうち、2人以上が賛成すれば、決まります。決まったあとの、実際の手続きは、各組合員が動きます。5項です。組合の常務は、各組合員が、単独で行えます。常務とは、日常の軽微な事務のことです。たとえば、食材の発注量を、少し調整することです。いちいち、3人の過半数を集めなくてよいのです。
新しい車の購入は、日常の軽微な事務ではないので、過半数で決めます。ただし書きがあります。常務でも、完了する前に、他の組合員が異議を述べたときは、単独では行えません。
図:内部関係② 業務執行者がいる場合
- 2項=組合契約の定めで、1人又は数人の組合員又は第三者に業務の決定と執行を委任できる
- 3項=その委任を受けた者が業務執行者(組合員でも第三者でもよい)
- 数人あるときは業務執行者の過半数で決定・各自が執行
- 4項=総組合員の同意で決定・総組合員が執行することも妨げない
- 5項=常務は各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる
- ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない
次に、運営を任された人がいる場合です。2項から4項です。2項です。組合契約の定めで、業務の決定と執行を、1人または数人に委任できます。組合員でも、組合員でない第三者でもかまいません。3項です。その委任を受けた者を、業務執行者と呼びます。業務執行者は、業務を決定し、執行します。数人いるときは、業務執行者の過半数で決めて、各業務執行者が執行します。例です。AがBとCから運営を任された場合は、Aが単独で決めて、単独で執行できます。業務の決定と執行は、Aに任されています。Aが1人で決められます。では、AとBの2人が、業務執行者だったら、どうでしょうか。
2人の過半数だから、1人でいい……いえ、2人のうち過半数だから、2人とも要るんですね。過半数とは、半分を超える数です。2人の半分は1人なので、過半数は2人です。AとBの両方の一致が要ります。4項です。業務執行者がいても、総組合員の同意で決めること、総組合員が自分で執行することは、妨げられません。5項の常務は、ここでも使えます。各業務執行者が、単独で行えます。完了前に、他の組合員か業務執行者が異議を述べたときは、除かれます。
組合の外との契約 組合代理
図:組合代理の趣旨
- 組合には法人格がない→第三者と契約するとき、組合員全員がその当事者になる
- 全員が実際に意思表示をするのは煩雑→代理人によって行うことが多い(組合代理)
- 代理の三面関係=代理人A/本人BとC/相手方D
ここから、冒頭の設例です。外との契約を見ます。組合には、法人格がありません。ですから、Dのような第三者と契約するとき、組合員の全員が、契約の当事者になります。ところが、全員が毎回、実際に意思表示をするのは、煩雑です。そこで、代理人を使うことが多くなります。これが、組合代理です。前に見た、代理の三面関係で整理します。AがDと契約するとき、代理人はA、本人はBとC、相手方はDです。Aは、自分の分は、自分で当事者になります。そのうえで、BとCの分を、代理します。そのとき、BとCのためにすることを示す必要があるのは、顕名のとおりです。委任の回で見たとおり、委任と代理権は、別のものでした。組合でも、業務を任せる話は670条、代理権は670条の2と、条文が分かれています。問題は、Aに、BとCの代理権があるかです。条文です。
条文民法670条の2
民法第670条の2 各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。 2 前項の規定にかかわらず、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる。この場合において、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができる。 3 前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者は、組合の常務を行うときは、単独で組合員を代理することができる。
1項です。各組合員は、組合の業務を執行する場合に、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理できます。誰も運営を任されていない場合の、設例の答えです。AがDと契約するには、組合員の過半数の同意を得ます。3人のうち2人の同意です。BかCのどちらかの同意を得れば、Aは、他の組合員を代理できます。過半数の同意を得ないまま結んだ場合、常務でもなければ、BとCについては、代理権がありません。代理の要件の1つめ、代理権が欠けます。代理権のない代理は、無権代理でした。その先の追認などは、代理の回で見たとおりです。
図:内部と外の対比
- 執行の常務(670条5項)=各組合員又は各業務執行者が単独で行える
- ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない
- 代理の常務(670条の2第3項)=各組合員又は各業務執行者は、組合の常務を行うときは、単独で組合員を代理することができる
- ただし書きはない
3項です。常務については、各組合員か各業務執行者が、単独で組合員を代理できます。ここで、さっきの5項と並べます。執行の常務には、異議を述べたときは除く、というただし書きがありました。代理の常務を定めた3項には、このただし書きが、条文の上では、ありません。条文の文言どおりに押さえてください。執行の常務には、異議のただし書き。代理の常務には、ただし書きなし。この差を、表の言葉で言えるようにします。
図:内部関係の設例の切替え
- AがBとCから運営を任された(業務執行者=A)
- 業務執行者でないBが、仕入れ先Dと勝手に契約したら、AとCは払う義務を負うか
ここで、設例を切り替えます。AがBとCから運営を任された、つまり、Aが業務執行者です。そこで1問です。業務執行者ではないBが、Dと勝手に契約したら、AとCは、払う義務を負うでしょうか?方向は合っています。2項で確かめます。
図:対外関係② 業務執行者がいる場合
- 業務執行者のみが組合員を代理できる(670条の2第2項)
- 業務執行者が1人ならその者が単独で/数人あるときは業務執行者の過半数の同意を得たときに限り
- 常務は各業務執行者が単独で(3項)
- 例=AがBとCから任された→Aが単独でDと契約できる/業務執行者でないBは、常務でなければA・Cを代理できない
2項です。業務執行者があるときは、業務執行者のみが、組合員を代理できます。業務執行者が1人なら、その人が、単独で代理します。数人いるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、代理できます。先ほどの問いの答えです。Bは、業務執行者ではありません。常務でなければ、AとCを代理する権限が、ありません。ですから、Bが勝手にDと契約しても、AとCの代理としては、効力が生じません。Aが業務執行者なら、Aが1人でDと契約できます。BとCがサインする必要は、ありません。業務執行者がいなければ、組合員の過半数の同意を得たうえで、Aが代理します。代理権のある人が結んだ契約なら、BとCも契約の当事者です。仕入れ代金を払う側に立ちます。組合員がどこまで責任を負うかは、次の回で扱います。ここは、論文で論点になりうるところです。
決定・執行・代理の表
図:決定・執行・代理×業務執行者の有無
- 業務執行者なし=決定は組合員の過半数(670条1項)/執行は各組合員(同)/代理は組合員の過半数の同意を得て(670条の2第1項)
- 業務執行者あり=決定は業務執行者(数人なら過半数。670条3項)/執行は業務執行者(数人なら各自。同)/代理は業務執行者のみ(数人なら過半数の同意。670条の2第2項)
- 常務=執行は単独(異議があれば不可。670条5項)/代理は単独(670条の2第3項・ただし書きなし)
- 注=総組合員の同意による決定・執行(670条4項)
ここで、今日の主役の表です。縦に、決定、執行、代理。横に、業務執行者のいない場合と、いる場合です。業務執行者がいない場合です。決定は、組合員の過半数。670条1項です。執行は、各組合員。同じく1項です。代理は、組合員の過半数の同意を得て。670条の2第1項です。業務執行者がいる場合です。決定は、業務執行者で、数人なら、その過半数。670条3項です。執行は、業務執行者で、数人なら、各業務執行者です。同じく3項です。代理は、業務執行者のみで、数人なら、過半数の同意を得たときに限ります。670条の2第2項です。常務は、別の枠です。執行は、単独で行えますが、異議を述べられたら、できません。670条5項です。代理は、単独で行えて、ただし書きがありません。670条の2第3項です。注として、総組合員の同意で決めること、総組合員が執行することは、いつでも妨げられません。670条4項です。表を、キッチンカーで使ってみます。たとえば、新しい車に買い替える場合です。これは常務ではありません。
Aが業務執行者なら、Aが1人で決めて、Aが1人で買う契約を結べます。食材の発注量を少し調整するのは、常務です。業務執行者がいなければ、Aはひとりで調整でき、Dへの注文も、1人でBとCを代理して出せます。業務執行者がいない場合は、過半数でまとまりをつくります。いる場合は、その人に任せます。常務の枠を除けば、この切替えで説明できます。
業務を担う組合員への委任の規定
図:委任の規定の準用
- 671条
- 644条から650条までの規定は、組合の業務を決定し、又は執行する組合員について準用する。内容=善管注意義務(644条)・報告(645条)・受取物の引渡し(646条)・金銭消費の責任(647条)・報酬(648条)・費用の前払(649条)・費用の償還(650条)。
業務を担う組合員の責任を、1つだけ見ます。委任の規定との関係です。
条文民法671条
民法第671条 第六百四十四条から第六百五十条までの規定は、組合の業務を決定し、又は執行する組合員について準用する。
読み方です。644条から650条までの、委任の規定が、準用されます。670条2項を思い出してください。業務の決定と執行は、組合員や第三者に、委任することができる、とありました。業務執行者は、条文の上でも、その委任を受けた者です。671条は、業務を担う組合員に、委任の受任者と同じ義務と費用の規定を当てます。委任の回で見た、受任者の義務と、費用の規定です。善良な管理者の注意で事務を処理する義務、報告の義務、費用の前払や償還などです。例です。AがBとCから運営を任されて、仕入れ代金を立て替えたとします。立て替えた費用は、委任の規定を準用して、償還を求められます。
条文の文言は、組合の業務を決定し、又は執行する組合員、です。業務執行者である組合員に限らず、670条1項で業務を決定し、執行する各組合員も含みます。
図:業務執行者まわりの残り
- 672条=業務の決定・執行を委任された組合員は、正当な事由がなければ辞任できない(1項)
- 正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任できる(2項)
- 673条=業務の決定・執行をする権利を有しない組合員も、業務および組合財産の状況を検査できる
業務執行者まわりに、あと2つの条文があります。672条です。業務を任された組合員は、正当な事由がなければ、辞任できません。解任は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致で行えます。委任なら、いつでも解除できました。651条です。671条が準用するのは650条までです。いつでも解除できる651条は持ち込まれず、辞め方は、組合の672条が自分で決めています。業務を誰に任せるかは、組合契約の中身そのものです。だから委任のように、いつでも一方的に辞めたり、降ろしたりはできません。かといって、どんな事情があっても辞められず、降ろせないのでは困ります。辞めるのを自由にすると事業が回らず、降ろすのを自由にすると任された人の立場が不安定になる、と説明されています。逆に一切認めないと、本人を縛り、ほかの組合員も困る、とも説明されます。そこで、正当な事由があるときに限って、辞任も解任も認めています。委任との違いは、ここです。これは、任された役を降りる話です。組合から抜ける話とは別です。673条です。業務を決定し、執行する権利を持たない組合員も、業務と組合財産の状況を検査できます。
今日のまとめ
図:今日のまとめ
- 組合契約=出資+共同の事業を約束して成立(667条)・出資は労務でもよい
- 団体のなかの位置=契約であり団体でもある・つながり方が直接
- 不適用3点=533条・536条/債務不履行解除/1人の無効・取消し(667条の2・667条の3)
- 中の決め方=過半数で決定・各自が執行/業務執行者がいれば業務執行者・常務は単独で異議あれば不可(670条)
- 外との契約=過半数の同意を得て代理/業務執行者のみ/常務は単独(ただし書きなし)(670条の2)
- 準用=644条から650条(671条)
今日の内容を整理します。組合契約は、出資をして共同の事業を営む約束で成立します。出資は、労務でもかまいません。組合は、契約であり、団体でもあります。そのため、同時履行と危険負担は使えず、他の組合員の債務不履行では解除できず、1人の無効や取消しは、ほかの組合員の間の契約を妨げません。中の決め方は、運営を任された人がいなければ、過半数で決めて、各自が動きます。業務執行者がいれば、業務執行者が決めて動きます。常務は単独です。冒頭の設例です。外との契約は、業務執行者がいなければ、組合員の過半数の同意を得て代理します。業務執行者がいれば、業務執行者のみが代理します。Aが任されていれば、Aが1人でDと契約でき、BとCのサインは要りません。組合の財産のことと、組合員が入れ替わる場面は、次の回で見ます。
参照条文
- 民法667条
- 民法667条の2
- 民法667条の3
- 民法670条
- 民法670条の2
- 民法671条