民法ゼロから民法#2

権利能力・意思能力・行為能力

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第1章 民法総則 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

権利能力(3条)

権利能力の始期と終期

権利能力とは、権利や義務の主体になれる資格のことです。自然人はすべて、出生した瞬間から平等にこれを持ちます。

条文

民法 第3条(私権の享有)

「出生」の時点について、通説は、体が母体から全部出た時とする全部露出説を採ります。3条2項は、外国人も原則として権利能力を持つことを定めています。もっとも、胎児には原則として権利能力がありません。ただし、例外が4つだけあります。

胎児の権利能力の4つの例外

不法行為の損害賠償請求権、相続、遺贈、そして認知の4つです。これらの場面では、胎児は「既に生まれたものとみなす」と扱われます。たとえば、Aが胎児のときに父Vが事故で亡くなり、その3か月後にAが生きて生まれたとします。このときAは、相続と損害賠償請求権のどちらの例外にもあたり、権利を取得できます。もっとも、胎児の間から権利能力が「ある」のか、それとも生まれて初めて遡って認められるのかは、なお争いがあります。判例は「停止条件説」を採ります。

停止条件説・解除条件説の対比

停止条件説とは、胎児の間はまだ権利能力が発生しておらず、生きて生まれて初めて出生時に遡って認められる、という考え方です。イメージとしては「雨が降ったら10%引き」のように、条件が成就して初めて効果が生じる関係に近いといえます。反対に、胎児の間も権利能力があり死産なら遡って消えるとするのが解除条件説(少数説)で、「退会したら特典が消える」パターンにあたります。判例は前者、停止条件のパターンで扱います。 権利能力は死亡によって終了します。明文の規定はありませんが、通説は、心臓が止まった時点とします。なお、失踪宣告があっても権利能力そのものは消滅しません(この点は別の回で扱います)。

意思能力(3条の2)

意思能力と取消的無効

意思能力は「今、判断できているか」という、その場の能力です。

条文

民法 第3条の2(意思能力)

明確な基準はなく、一般に7〜10歳程度が目安とされます。たとえば、居酒屋で泥酔して正常な判断力を失ったAが、その場でスマホから15万円の腕時計を注文したとします。この場合の効果は、取消しではなく無効です。意思能力を欠いていたので、契約自体が最初から無かったことになるからです。 この無効は、本人を保護するための制度です。そのため、この無効を主張できるのは基本的に表意者側だけです。これを、公序良俗違反のような無効と比べてみましょう。CとDが違法な賭博資金として金銭消費貸借契約を結んだ場合、これも無効ですが、誰でも、第三者でも主張できます。前者を取消的無効、後者を確定無効と呼び分けます。

行為能力とは(総論)

取消し・無効の比較と4類型予告

意思能力の有無は、その場限りの事情です。後から「あのとき判断できなかった」と立証するのは大変です。そこで民法は、年齢などの外から見える基準で線引きをし直します。これが行為能力、正確には制限行為能力者制度です。 ここが最大の分かれ目です。制限行為能力の場合、効果は取消しに留まります。意思無能力は無効、制限行為能力は取消し——この区別を押さえてください。取消しに留めるのは、取引の相手方が、いつまでも契約が覆されるかもしれない不安を抱えずに済むようにするためです。本人保護と取引の安全、この2つを両立させる工夫です。 制限行為能力者には、あと3つの類型があります。名前だけ先に見ておきましょう。成年被後見人、被保佐人、被補助人です(詳細は後編)。最後に、面白い具体例を1つ。15歳のAが、契約当日に高熱で朦朧としたまま、法定代理人の同意も得ずに20万円の契約をしたとします。このとき、未成年者を理由に取消しを主張してもよいし、意思無能力を理由に無効を主張してもかまいません。これを二重効肯定説と呼び、両方の道が用意されています。

未成年者(5条・6条)

未成年者の体系図

成年年齢は18歳です。

条文

民法 第4条(成年)

以前は20歳でしたが、2022年4月の改正で18歳に変わりました。現行法では18歳です。ここは要注意の罠です。未成年者の法律行為には、原則と例外があります。まず原則から見ましょう。

条文

民法 第5条(未成年者の法律行為)

たとえば、17歳の高校生Aが親に無断でオンライン学習教材を契約したとします。3万円の契約で、法定代理人の同意はありません。この場合、5条1項本文と2項のとおり、契約を取り消すことができます。 もっとも、例外もあります。第一に、単に権利を得るだけ・義務を免れるだけの行為です。ただでプレゼントをもらうような場合で、未成年者に不利益がないため保護の必要がありません。第二に、処分を許された財産の処分です。Aが誕生日にお小遣いをもらい、そのお金で友人へのプレゼントを買った場合など、使い道を定めずに渡されたお金なら自由に使えます(5条3項後段)。このほか、認知や遺言などの身分行為は、同意なく単独でできます(詳細は家族法編で)。

法定代理人の4つの権限

さらに、6条は営業の許可を定めます。

条文

民法 第6条(未成年者の営業の許可)

たとえば、Aが親の許可を得てハンドメイドアクセサリーの店を営業しているとします。その営業の範囲内であれば、仕入れも販売契約も、成年者と同じように単独で有効にできます。ただし、許可は営業ごとに全部か無しかで、範囲を細かく限ることはできません。営業に堪えられない事情が出てきたら、法定代理人が許可を取り消せます。この取消しは遡らず、それより後の行為だけに効果が及びます。 なお、ここでいう法定代理人とは、親権者である父母や未成年後見人のことです。法定代理人は大きく4つの権限を持ちます。本人に代わって契約する代理権、契約に事前に同意する同意権、同意なき行為を取り消す取消権、そして事後的に認める追認権です。この4つの詳しい使い方は、また別の回でじっくり扱います。

まとめ・自己テスト・次回予告

今日のまとめ

権利能力は、誰もが平等に持つ、権利義務の主体になれる資格です(始期は出生)。意思能力を欠く行為は無効、制限行為能力者の行為は取消しになります。未成年者は18歳未満で、原則は法定代理人の同意が必要でした。例外は、権利を得るだけの行為、処分を許された財産、営業の許可の3つです。 ここで簡単な自己テストです。答えを声に出してみてください。1つ目、意思能力を欠く行為の効果は、無効と取消し、どちらでしたか。2つ目、判例は胎児の権利能力について、停止条件説と解除条件説、どちらを採りましたか。3つ目、未成年者が同意なしにできる行為を、1つ挙げられますか。 すべて答えられれば、3つの能力の地図はしっかり定着しています。後編では、未成年者よりも重い3つの類型と、その相手方の保護を扱います。取消しの後始末をどう安定させるか、という話も出てきます。では後編でまたお会いしましょう。

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