行政処分を軸にした体系
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第3章 行為形式の地図と行政基準 ㉞/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
同じ工場への3つの働きかけ
図:ある町の騒音の工場への3つの働きかけ
- 勧告=「音を小さくしてください」と文書で伝える
- 命令=「改善しなさい」と命じる
- 罰則=命令に従わないと刑罰
- 問い=手続は同じか・争い方は同じか
前回は、行政の活動を5つの型に分けて、処分を見分ける3つの物差しを見ました。今日は、型が分かると何が決まるのかを、地図にします。ある町の町長が、騒音を出している工場に、まず文書で、音を小さくしてください、と勧告しました。聞き入れられないので、次に、改善しなさい、と命令しました。それでも従わなければ、罰則があります。一つの工場の騒音という点では、確かに同じ話です。けれど、法的な扱いは、まるで違います。手続も、争い方もです。工場の経営者が裁判で争うなら、どれを、どう争うのでしょうか。1つにまとめて争えない点が、分かれ目です。今日の答えを先に言います。どの型かで、行政が使える道具と、国民が使える手続や争い方が、まとめて決まります。その中心にいるのが、処分です。この工場の話には、最後に戻ってきます。
「処分」は3つの法律に共通の入口
図:3つの法律の入口は同じ言葉
- 行政手続法=行政が動く前の手続
- 行政不服審査法=行政の中での不服申立て
- 行政事件訴訟法=裁判所への訴え
- どれも入口は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」
行政の活動の中から、処分を取り出して、横断的に捉えることには、意味が2つあります。1つ目は、条文の上での意味です。行政が国民に何かをするとき、国民を守る一般的な法律が3つあります。行政手続法と、行政不服審査法と、行政事件訴訟法です。順に、行政が動く前の手続、行政の中での不服申立て、裁判所での訴えを受け持ちます。3つの法律に共通点はあります。3つとも、入口の言葉が処分なのです。行政手続法は、2条2号で処分を定義していました。行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為、でした。残りの2つを、条文で確かめます。まず、行政事件訴訟法3条2項です。
条文行政事件訴訟法3条2項
行政事件訴訟法第3条第2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
取消訴訟が対象にするのは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為です。かっこの中の裁決は、審査請求に対する行政庁の判断のことです。これらは別に定められているので除いて、残りを単に処分と呼ぶ、という意味です。次に、行政不服審査法1条2項です。
条文行政不服審査法1条2項
行政不服審査法第1条第2項 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
行政の中での不服申立ては、処分についてのものなら、この法律で行う、という条文です。法律は別々でも、入口の言葉はそろえてあります。ですから、ある行為が処分に当たるかどうかで、この3つの制度が使えるかどうかが、一度に決まります。具体例で見ます。県の知事が、法律にもとづいて、喫茶店Bに、営業停止を命じたとします。これは処分です。命じる前に、Bの言い分を聞く手続があります。命じられたあとは、Bは審査請求ができ、取消訴訟も起こせます。一方、同じ知事が、Bに、営業時間を短くしてもらえませんか、とお願いしただけなら、処分ではありません。処分としての手続も、審査請求も、取消訴訟も、この形では使えません。同じBへの働きかけでも、ここで分かれます。なお、処分の効力を否定したいときは、原則として取消訴訟という道を通すことになっています。その理由は、後の回で見ます。
定式は、この処分という言葉の中身を、判例が言葉にしたものです。3つの法律に共通の入口の言葉があって、その中身を決めるのが定式、という関係です。本格的な判断は、後の章で扱います。今は、処分は3つの法律に共通の入口、と置いてください。
法律、処分、強制の3段
図:行政の側の3段と、私人の側の2本の道
- A=議会→B=行政庁:法律で根拠を与える
- B→C=私人:処分で具体的に決める
- B→C:義務に従わなければ強制執行〔根拠法がある場合だけ〕
- C→B:不服申立て
- C→D=裁判所:取消訴訟
2つ目の意味は、理論上の意味です。行政の活動を、型というパーツに分けて、仕組みを読むための道具にする、ということです。その中でも、処分は特別です。行政が、一方的に、国民の具体的な権利や義務を動かす場面だからです。法的に特に重要な節目なので、行政法は、昔から処分を中心に置いてきました。板の骨格を見てください。行政の側は、3段です。1段目は、法律です。行政は法律に従う、という原則でした。条例も含めて読みます。2段目が、処分です。法律は、誰にでも当てはまる形で決めます。それを個別の国民に当てはめて、具体的にするのが処分でした。前回の、2段構えです。3段目は、第1章で見た、行政上の強制執行です。処分で義務を課したのに、相手が従わないとき、行政が裁判所の力を借りずに、自分の力で実現する仕組みです。
民間では、金銭の取り立てに裁判が要ります。けれど行政は、法律で認められたときに限って、自力で実現できます。税金で見ます。法律が、税の仕組みを決めます。これが1段目です。Bの申告が誤っていれば、税務署長が、正しい税額はいくらだ、と決めます。これが2段目の処分です。決まった税額を期限までに払わなければ、税務署が財産を差し押さえます。滞納処分と呼ばれる、3段目です。法律の根拠が無ければ、行政は強制できません。強制は、国民の自由に最も強く踏み込む力だからです。法律の根拠が、特に厳しく求められる場面です。強制執行の種類は、後の回で見ます。次に、国民の側です。違法な処分に対抗する道は、2本あります。1本目は、不服申立てです。行政の中で、処分を見直してもらうよう求める手続です。その中心が、行政不服審査法による審査請求です。簡易迅速に進むのが長所です。反面、行政の内部での判断なので、中立性は裁判所に劣ります。2本目は、取消訴訟です。行政事件訴訟法による、裁判所への訴えで、最後の手段になります。審査請求を先に済ませなくても、原則として、直ちに訴えられます。勝てば、その処分は、出された時にさかのぼって、なかったことになります。ここまでで、今日いちばんの要点です。
図:処分に当たるかどうかで分かれること
- 当たる=根拠法があれば強制執行できる
- 審査請求と取消訴訟で争える
- 当たらない=強制執行できない
- 審査請求・取消訴訟の対象にもならない
- ただし別の争い方はある
処分に当たる行為は、2つのことができます。根拠となる法律があれば、行政が強制執行できます。国民は、不服申立てと取消訴訟で争えます。処分に当たらない行為は、強制執行もできませんし、取消訴訟や審査請求の対象にもなりません。行政法の体系が、処分を中核に組み立てられているのは、このためです。処分でない行為が、争えなくなるわけではありません。取消訴訟や審査請求とは別の道があります。次の節で見ます。なお、審査請求の対象には、処分のほかに、申請に行政が答えないことも含まれます。細かい点は、後の章です。ここで1問です。町が、喫茶店Bに、看板の照明を夜は消してもらえませんか、とお願いしました。Bが応じないので、町の職員が、夜中に看板の電源を切ってしまいました。許されますか。
許されないと思います。お願いは行政指導なので、Bには従う義務がありません。強制するには、処分で義務を課して、根拠になる法律も要るはずです。従う義務がなく、義務を課す処分もないのに、実力で実現することはできません。強制には、法律の根拠が要ります。
型ごとの事前の手続と、事後の争い方
図:前回の3つの物差し
- 権利義務に直接関わるか
- 具体的に決めるか
- 公権力か=法律が一方的に決める権限を与えているか
- 当てはまらない例=行政指導・内部行為・法令や行政基準・契約
表に入る前に、前回の復習です。町が部下に配った、窓口の運用ルールの文書は、3つの物差しのどれで、処分から外れましたか?国民の権利義務に直接関わらないからです。役所の内側の話なので、内部行為でした。ここから、型が決まると何が決まるのかを、表にします。
図:型ごとの事前の手続と事後の争い方①
- 処分=行手法の処分手続+取消訴訟・審査請求
- 行政基準=意見公募手続+確認訴訟など
- 行政指導=行手法の規律〔自治体は自ら定める〕+確認訴訟などの可能性
規制の方法は、2通りあります。事前と事後です。事前は、行為ができあがるまでの手続を、法律で決めておく方法です。一般的な法律は、行政手続法です。事後は、できあがった行為が法律に合っているかを、あとから審査する方法です。一般的な法律は、行政不服審査法と、行政事件訴訟法です。型ごとに、事前と事後を見ます。行ごとに上から読みます。ここで言うのは、あくまで一般的な整理です。個別の行為が処分に当たるかどうかは、後の章で別に判断します。1行目は、処分です。事前は、行政手続法に、2種類の手続があります。営業許可のような、申請に対する処分の手続と、相手に、直接、義務を課したり、権利を制限したりする、不利益処分の手続です。さっきの喫茶店Bの営業停止は、不利益処分なので、命じる前に、Bの言い分を聞きます。事後は、取消訴訟と審査請求です。事前も事後も、一般的な法律が整っています。2行目は、政令や省令などの行政基準です。事前は、意見公募手続です。ルールを定める前に、広く国民の意見を募ります。事後は、確認訴訟などの道があります。
たとえば、省令が事業者に新しい義務を定めたとします。省令は、誰にでも当てはまる一般的なルールなので、ふつうは処分に当たらず、取消訴訟では争えません。そこで、その事業者が、その義務を負わない立場にあることの確認を、裁判所に求めます。取り消すのではなく、自分の法的な立場を確認してもらう訴えです。3行目は、行政指導です。事前は、行政手続法の行政指導の章に、規律があります。任意の協力が前提であること、趣旨や内容を示すこと、応じなくても不利益に扱ってはならないこと、などです。この規律が直接及ぶのは国の機関の行政指導です。自治体の行政指導は、自治体が自分で定めます。多くは条例です。事後は、確認訴訟などの可能性があります。行政指導は、もともと相手に義務を課しません。確認してもらうべき義務が、ふつうは見当たらないので、確認訴訟が使えるかどうかは、場面によります。
図:型ごとの事前の手続と事後の争い方②
- 行政計画=事前の一般法なし+確認訴訟など〔処分と認められれば取消訴訟〕
- 行政契約=事前の一般法なし+民事訴訟
- 処分だけ事前も事後も一般法が揃う
4行目は、行政計画です。事前の一般的な法律は、ありません。個別の法律に、計画の作り方が定められていることがあるだけです。事後は、確認訴訟などです。たとえば、道路の計画で土地の利用が制限される地主が、制限に従う義務のないことの確認を求める、といった形が考えられます。計画が処分と認められる場合には、取消訴訟になります。5行目は、行政契約です。事前の一般的な法律は、やはりありません。事後は、民事訴訟です。たとえば、町が工事の代金を払わないとき、業者は、民事訴訟で支払いを求めます。契約は、行政と私人が対等な立場で結ぶものなので、ふつうの民事の争いと同じ形で扱えます。
計画と契約には、事前の一般的な法律は今もありません。個別の法律で手当てされることはありますが、一般的な法律は、まだ整っていません。
図:型ごとに事前の手続が違う理由——比較
- 処分=特定の人の権利義務を直接動かす→その人の言い分を聞く
- 行政基準=不特定多数に向けたルール→広く意見を募る
- 行政指導=従うかどうかを相手が選べる→無理強いにならない歯止め
手続が型ごとに違うのは、相手と、効き方が違うからです。処分は、特定の人の権利義務を直接動かします。だから、その人の言い分を聞く手続が中心になります。行政基準は、不特定多数に向けたルールです。特定の人に聞くのではなく、広く意見を募ります。行政指導は、相手が従うかどうかを選べます。ただ、行政から言われると、事実上は断りにくいものです。だから、無理強いにならないための歯止めが中心です。事前の手続は、その型の危うさに合わせて作られている、と読んでください。
図:落とし穴
- 確立したルートは処分→取消訴訟だけ
- ほかの型の確認訴訟などは可能性にとどまる・要件は判例と学説・確認の利益が要る
- 契約は昔から民事訴訟
落とし穴を、2つ挙げます。まず1つ目。確立したルートは、処分から取消訴訟に至る道だけです。ほかの型の確認訴訟などは、認められる可能性がある、という程度です。要件は条文に書かれていなくて、判例と学説に委ねられています。確認訴訟には、確認の利益、つまり確認を求めるだけの法的な必要が要ります。2つ目。契約は、民事訴訟で争う道が昔からありました。覚えるのは、これです。型ごとに、事前と事後の道具が違います。処分だけが、事前も事後も揃っています。
整備の歴史:事後から事前へ、処分から他の型へ
図:整備の広がり方
- 縦=事後から事前へ:1993年に行政手続法を制定
- 横=処分から他の型へ:行政指導の規律〔行政手続法〕・2005年の行政手続法改正で意見公募手続・2004年の行政事件訴訟法改正で確認訴訟を明示
- 中心=処分と取消訴訟
この表は、最初からこうだったわけではありません。少しずつ整ってきた結果です。昔の行政法は、処分と取消訴訟に、ほぼ目を向けていました。処分が行政の節目なので、そこを裁判所が取り消せば、国民の権利が守られ、行政が適法に動くことも保てる、という発想です。そこから、2つの方向に広がりました。まず、縦に伸びました。事後から事前へ、です。裁判になる頃には、営業を止められるなど、もう損害が出ています。取り消されても、失った時間は戻りません。出す前に、言い分を聞くといった手順を決めておくほうが、早く確実に守れます。そこで、1993年に、行政手続法が制定されました。次に、横に広がりました。処分から、ほかの型へ、です。処分だけを捕まえても、多様な行政の活動には、網が掛かりません。行政手続法には、制定のときから、行政指導の規律が置かれました。行政基準については、2005年の行政手続法の改正で、意見公募手続が整備されました。さらには、事後の訴えの側にも、2つの方向があります。これは地図として押さえてください。1つ目は、処分性を広げる方向です。処分に当たることを、処分性がある、と言います。処分の概念を広げて、計画や行政指導の一部にも、処分性を認めます。そうして、取消訴訟で争えるようにする工夫を、判例と学説が積み重ねてきました。広げることの意味と限界は、後の章で見ます。2つ目は、確認訴訟を使う方向です。第1章で、行政事件訴訟法4条の当事者訴訟を見ました。処分の取消しを求めるのではなく、権利や地位そのものを、当事者として争う訴えでした。2004年の改正で、その4条に、確認の訴えが例として書き加えられました。処分に当たらない行為でも、自分の立場を確かめてもらえれば、救済につながります。そこで、無理に処分の範囲を広げるよりも、この確認訴訟を活用する方向が示されたのです。
確認訴訟が何でも通るわけではありません。先ほどの確認の利益が要ります。取消訴訟のように、要件が固まってはいません。本格的な中身は、後の章です。事前の手続も、その後に育っています。2014年の行政手続法の改正で、行政指導の中止を求める手続と、処分をしてほしいと求める手続が加わりました。中身は、後の回です。縦にも横にも、広がりの中心にいるのは処分です。さっきの表の1行目が、いちばん整っているのは、そのためです。
型の組み合わせで個別法を読む
図:騒音規制法の仕組み
- 法律が特定施設を定める〔どの施設かは政令に委ねる=行政基準〕→市町村長が期限を定めて改善を勧告〔行政指導〕→従わないとき期限を定めて改善を命令〔処分〕→命令に違反すると罰則〔刑罰は裁判所が科す〕
- 各段で手続と争い方が違う
冒頭の工場に戻ります。実際の個別法は、1つの型で完結しません。複数の型を組み合わせています。型は、仕組みを読むための、文法のようなものです。騒音規制法を素材にします。個別の法律の条番号や文言は、覚える必要はありません。仕組みの流れだけ、板で追ってください。法律は、著しい騒音を出す施設を、特定施設と呼びます。どの施設かは、政令で定めます。政令は行政基準です。命令などを定めるときは、意見公募手続を経ます。次に、市町村長は、規制基準、つまり守るべき騒音の大きさの上限に合わない工場があって、周りの生活環境が損なわれると認めるとき、その工場に、期限を定めて、改善を勧告できます。これが、町長の勧告です。勧告は行政指導です。相手を法的に縛るものではなく、応じるかどうかは任意です。勧告に従わないと、市町村長は、期限を定めて、改善を命令できます。命令は処分です。不利益処分ですから、言い分を述べる機会を与える手続の対象になりますし、取消訴訟や審査請求の対象にもなります。
この法律では、命令は、勧告に従わなかったときに限って出せる形になっています。穏やかな手段で解決できるなら、そのほうが双方に負担が少ないからです。強い手段ほど、国民の権利を直接動かします。だから、処分として、手続と争い方が用意されます。命令に違反すると、罰則があります。罰則は、行政の型ではありません。刑罰を科すのは裁判所です。けれど、この仕組みの重要な一部です。勧告に、行政手続法の指導の規律はそのまま使えません。町がする行政指導の手続は、行政手続法ではなく、町が自分で定めます。多くは条例です。行政手続法は、自治体の機関がする行政指導を、行政指導の章の対象から外しています。地方自治を尊重して、自治体が自分で定めるように任せているのです。ただし、任意の働きかけだという性質は、同じです。冒頭の問いに答えます。工場の経営者が、裁判で争えるのは、命令です。命令は処分なので、取消訴訟と審査請求の対象になります。勧告は、一般には処分ではなく、取消訴訟の対象になりません。例外として、勧告に処分性が認められた例もありますが、それは後の章で扱います。基準となる政令は、意見公募手続を経て作られます。型が違えば、手続も争い方も違うのです。型の見方は、仕組みを分析する役に立ちます。全体像が見え、各段階で国民にどんな手続と争い方があるかが分かります。新しい仕組みを設計するときの部品にもなります。ここで1問です。命令に従わず、罰則を科されそうな工場が、命令は違法だった、と主張したいとします。どの型の争い方を使うのが原則ですか。
命令は処分なので、取消訴訟で、命令を取り消してほしいと争うのが原則だと思います。命令が違法なら、取り消してもらいます。刑事裁判の中で、命令の違法を主張できるかどうかは、別の問題です。これも後の回で見ます。
図:行政行為と処分
- 行政行為=学問上の概念〔この語を使う法律はない〕
- 処分=実定法上の概念〔行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の入口〕
- 観点が違う
- もとは範囲が一致→訴訟での救済のため処分の範囲を広げた→完全には重ならない
最後に、用語を1つ整理します。行政行為と処分です。行政行為は、学問上の概念です。この言葉を使う法律はありません。処分は、実定法上の概念で、学問上の行政行為をもとに作られました。見ている観点が違います。行政手続法や、行政不服審査法、行政事件訴訟法の適用を論じるときは、処分の語を使います。もとは、2つの範囲は一致していました。けれど、訴訟で国民を救済するために、処分の範囲が広げられてきました。ですから、今は完全には重なりません。中身は、後の回で扱います。
今日のまとめ
図:今日の地図
- 保存版
- (処分で横断して捉える意味=3つの法律の入口/行政過程を読む道具/骨格=法律→処分→強制、私人は不服申立てと取消訴訟/処分に当たらないと強制も取消訴訟もない/型ごとの事前・事後=処分だけ両方揃う・計画と契約は事前の一般法なし/広がり=事後から事前へ・処分から他の型へ〔1993・2005・2004〕/個別法は型の組み合わせ=基準→指導→処分→罰則)
冒頭の問いの答えを、まとめます。どの型かで、行政が使える道具と、国民が使える手続や争い方が、まとめて決まります。1つ目。処分で横断して捉える意味は2つです。行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法の3つが、処分を入口にしていること。そして、行政の過程を読む道具になることです。2つ目。骨格は、法律、処分、強制の3段です。国民の側には、不服申立てと取消訴訟があります。処分に当たらない行為は、強制執行もできず、取消訴訟や審査請求の対象にもなりません。ただし、別の争い方はあります。3つ目。型ごとに、事前と事後の道具が違います。処分だけが両方揃い、計画と契約には、事前の一般的な法律がありません。4つ目。整備は、事後から事前へ、処分からほかの型へと広がってきました。1993年の行政手続法、2005年の意見公募手続、そして、2004年の確認訴訟の明示です。5つ目。個別法は、型の組み合わせです。基準、指導、処分、罰則の順に、型が違うので、手続も争い方も違います。
参照条文
- 行政事件訴訟法3条2項
- 行政不服審査法1条2項