刑法ゼロから刑法 論文

正当防衛(成立要件・36条1項)の書き方

キャンプ場の管理小屋で、初対面の大柄な利用客の乙にいきなり突き飛ばされて頬を殴られた管理人の甲が、薪で乙の振りかぶった腕を1回打って骨折させた事例で、甲の罪責を答案に書き切る回。傷害罪の構成要件該当性を認めたうえで、36条1項の6つの言葉を上から順に当てる。前半の4つ(急迫・不正・侵害・自己又は他人の権利)は短く通り、基準を立てる必要がある「防衛するため」(防衛の意思)と「やむを得ずにした行為」(必要最小限度)を厚く書いて、正当防衛の成立まで結ぶ。道具を手斧に変えた場合と、反撃のときの心を攻撃だけに変えた場合の、結論が逆になる2場面も確かめる。

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ゼロから刑法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

管理小屋での経過 図:管理小屋での経過

今日は、1つの事件を、答案の頭から最後まで書き切ります。舞台は、山あいのキャンプ場の管理小屋です。受付も兼ねた、6畳ほどの小屋で、夏の夜の午後10時ごろです。出入口は、引き戸が1か所だけです。小屋の奥には、壁と作業台に挟まれた、幅1メートルほどのすき間があります。作業台のわきには、ストーブ用の薪が積んであります。長さは約40センチ、太さは手首ほどです。登場するのは2人です。キャンプ場の管理人の甲は、54歳。身長は約165センチ、体重は約60キロです。利用客の乙は、29歳。身長は約188センチ、体重は約95キロで、日ごろから体を鍛えている大柄な男です。2人は、初対面です。

甲は、小屋の奥の作業台で、貸出し用の用具を点検していました。そこへ乙が、引き戸を開けて入ってきて、「呼び鈴を何度も鳴らしたのに、いつまで待たせるんだ」と怒鳴ります。甲は、乙が初対面で、今日の受付も別の係でしたから、何かが起きるとは、思ってもいませんでした。「すみません、いま行きます」と答えかけたところで、乙は大股で、奥へ踏み込みます。ここで、大事なことを先に言っておきます。甲は、乙に指一本触れていません。先に手を出したのは、乙です。乙は、いきなり両手で甲を突き飛ばします。甲は背中から壁に打ちつけられ、体勢を崩しました。甲の背後は壁、右手側は作業台で、正面には乙が立ちはだかっています。甲は、その場から動けません。出入口は乙の背後で、約4メートル先です。さらに乙は、右の拳で、甲の左の頬を1回殴りました。強い痛みが走ります。乙はそのまま正面に立ちはだかり、右の拳を大きく振りかぶって、「もう一発いくぞ」と言いました。

甲は、いきなり殴られて、「ふざけるな」と腹が立ちました。同時に、このままでは顔を殴られ続ける、と思います。あの腕を打てば、拳は振れなくなる、とも考えました。右手が届く作業台のわきに、薪が積んでありました。甲は右手で、その1本をつかみ、乙の振りかぶった右の前腕めがけて、1回だけ打ち下ろします。乙の右の前腕の骨が折れました。全治約2か月です。乙はその場にうずくまり、甲はそれ以上殴らずに、薪を置いて、すぐに消防へ通報しました。

誰が誰に何をしたか 図:誰が誰に何をしたか

順番を、図で整理します。1番目が、乙から甲への、突き飛ばして壁に打ちつけ、頬を殴る行為です。2番目が、甲から乙への、薪を打ち下ろす行為です。問いは、これだけです。甲の罪責を論じなさい。

罪名と条文の特定

乙の右前腕を打った甲の行為 図:乙の右前腕を打った甲の行為

答案は、甲の行為から書き出します。論じる対象は、甲が薪で乙の右の前腕を打った行為です。まず、何罪の構成要件に当たるかを決めます。傷害罪を考えます。条文を見ます。

条文刑法204条

刑法204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

乙は右の前腕の骨が折れ、全治約2か月です。人の身体を傷害したといえます。甲は、腕を打てば拳を振れなくなると考えて打っていますから、けがをさせる認識もありました。このように、その罪の条文にあてはまることを、構成要件に該当する、といいます。甲の行為は、傷害罪の構成要件に該当します。答案は、ここで終わりません。傷害罪にあたる行為でも、違法性を阻却する事情があれば、犯罪は成立しないからです。阻却とは、違法でなかったと評価し直すことです。そこで、構成要件に当たると書いたうえで、違法性を阻却する事情がないかを検討します。今回は、正当防衛です。

36条1項を引いて、検討の順を決める

36条1項の6つの言葉と、事例での扱い 図:36条1項の6つの言葉と、事例での扱い

正当防衛の条文を、引きます。

条文刑法36条1項

刑法36条1項(正当防衛)
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

条文は、言葉を区切って、上から順に検討します。急迫、不正、侵害、自己又は他人の権利、防衛するため、やむを得ずにした行為。6つです。ただし、6つを同じ厚みで書くわけではありません。前半の4つは、この事例では、言葉の意味をそのまま事実に当てれば足ります。乙が現に殴りかかっていて、それが違法な暴行であることに、争う余地がないからです。事実を当てて、短く通ります。後半の2つは、前半の4つと扱いが違います。基準を立ててから事実を当てる必要が出るのは、後半の2つです。条文に、その基準が書かれていないからです。防衛するため、とありますが、どんな気持ちなら足りるのかは、書いてありません。やむを得ずにした行為、とありますが、どこまでなら許されるのかも、書いてありません。この2か所は、解釈で基準を立ててから、事実を当てます。答案の厚みは、ここに置きます。

急迫不正の侵害

急迫不正の侵害に事実を当てる 図:急迫不正の侵害に事実を当てる

ここは、短く通ります。最初は、急迫です。入る前に、前に確認したことを思い出してください。侵害が来ると分かっていた、というだけでは、急迫性は失われませんでした。では、どんな意思で臨むと、急迫性が否定されるのでしたか?予期した侵害の機会を利用して、積極的に相手を加害しようとする意思で臨んだとき、でした。その意思を、積極的加害意思といいます。来ると分かっている侵害を、相手を加害する機会として自分から利用するつもりで臨んだ人は、差し迫った侵害から身を守る立場にあるとはいえません。だから、急迫性が否定されます。では、急迫の意味を確かめます。

急迫の定義 図:急迫の定義

急迫とは、侵害が今まさに起きているか、もう目の前まで来ていることです。乙は、すでに頬を殴ったうえで、拳を振りかぶり、「もう一発いくぞ」と言っています。次の殴打は、目前です。間近に押し迫っています。先ほどの問いに戻ると、甲は、乙とは初対面でした。乙が来ることも、殴ってくることも、少しも予期していません。予期していた事情がありませんから、積極的加害意思の問題は、出てきません。

急迫不正の侵害に事実を当てる 図:急迫不正の侵害に事実を当てる

次は、不正です。不正とは、違法ということです。乙の突き飛ばしと殴打は、暴行罪にあたる違法な行為です。ですから、不正です。侵害は、この暴行そのものです。自己又は他人の権利は、殴られているのが甲自身の身体ですから、自己の権利です。以上で、急迫不正の侵害が認められます。前半の4つは、これで通過です。

防衛するため——防衛の意思

36条1項の6つの言葉と、事例での扱い 図:36条1項の6つの言葉と、事例での扱い

後半の1つ目です。条文の文言は、「防衛するため」です。怒りながら反撃した人に、防衛の意思を認めてよいのか。ここが問題になります。「防衛するため」とある以上、防衛の意思が必要です。ところが、攻撃的な気持ちが混ざっていた場合に、防衛の意思は否定されないか。ここで、基準を立てます。手がかりは、条文の「ため」という文言です。

⭐ 論文で書く規範:防衛の意思
「ため」という文言から防衛の意思が必要であるが、正当防衛は反射的に行われることも多いから、その内容は、侵害を認識しつつこれを避けようとする単純な心理状態で足りる。
もっとも、防衛に名を借りて、もっぱら攻撃の意思で反撃した場合には、防衛の意思は否定されると解する。
(規範(通説で立てる))

規範カード|防衛の意思 図:規範カード|防衛の意思

前半の「反射的」とは、とっさに、ということです。いきなり殴られた人に、冷静に考えた末の心の準備まで求めるのは、無理があります。だから内容は、攻撃を分かったうえで、それを避けようとする、という単純な心理状態で足ります。後半の「名を借りて」は、防衛を口実にして、という意味です。攻撃を避けるつもりが少しもなく、防衛という名前だけを借りて、もっぱら攻撃するつもりだった場合には、防衛の意思は否定されます。殴られて腹が立たない人は、まずいません。腹立ちが少しでもあれば防衛の意思が消えるのなら、正当防衛が成り立つ場面は、ほとんどなくなってしまいます。避けようとする気持ちがあるかぎり、腹立ちが混ざっていても、防衛の意思は残ります。

防衛の意思:事実を拾う観点 図:防衛の意思:事実を拾う観点

では、この基準に、甲の事実を当てます。甲の事実から、侵害を避けようとする気持ちを示す事実と、攻撃の気持ちを示す事実を、1つずつ拾うと、何になるでしょうか?

防衛の意思:事実を当てる 図:防衛の意思:事実を当てる

殴られ続けると思って薪をつかんだことと、腹が立ったこと。この2つの事実を、評価します。まず、避けようとする気持ちのほうです。甲は、乙の拳が迫っていることを分かっていて、それを止めたくて、薪を振るっています。侵害を認識しつつ、避けようとしていたといえます。次に、腹が立ったことのほうです。この腹立ちは、いきなり殴られたことへの反応です。拳を止めようとする気持ちと、同時にあったにとどまります。2つの気持ちが同時にあることを、併存といいます。さらに、ねらいは頭ではなく腕で、打ったのは1回だけ、乙がうずくまると手を止めています。うずくまった相手にそれ以上打ち込まず、手を止めたことは、拳を止めることが目的だったことと矛盾しません。防衛を口実にして、もっぱら攻撃しようとした人の動きとは、いえません。ですから、甲が防衛に名を借りてもっぱら攻撃の意思で反撃したとはいえず、防衛の意思は否定されません。「防衛するため」の行為といえます。

やむを得ずにした行為——本番

最後の1つが、いちばん迷うところです。問題になるのは、反撃の強さです。素手の相手に物を使い、生じた結果も重い。それでも「やむを得ずにした行為」といえるか。反撃のやり方として行き過ぎていないか、つまり相当性が問われます。ここも条文に基準が書かれていませんから、基準を立てます。

⭐ 論文で書く規範:やむを得ずにした行為
「やむを得ずにした行為」とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として、必要最小限度のものであることをいう。
(規範(最判昭44・12・4))

規範カード|やむを得ずにした行為 図:規範カード|やむを得ずにした行為

ここでの「最小限度」は、使える手段のうち、いちばん軽いものを選びなさい、という意味ではありません。防衛手段として、行き過ぎていない範囲に収まっているか、ということです。判例の言葉を、確かめます。

判例最判昭44・12・4 刑集23巻12号1573頁

反撃行為の相当性
刑法三六条一項にいう「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであつて、反撃行為が右の限度を超えず、したがつて侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であつても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべきである。

判旨は、旧い条文の言葉で書かれています。「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」とは、いまの「やむを得ずにした行為」のことです。読むのは、2か所です。1つ目は、必要最小限度のものであること、すなわち、防衛手段として相当性を有するものであること、というくだりです。必要最小限度とは、相当性のことだと、言い換えられています。2つ目は、後半です。相当性を有する以上、結果がたまたま侵害されようとした法益より大きくても、正当防衛でなくなるものではない。法益とは、法が守る利益のことで、この事例では甲の身体です。測るのは反撃の行為であって、結果の大きさではありません。なぜ、結果で測らないのか。条文を比べると分かります。緊急避難という別の制度を定める37条1項は、生じた害が、避けようとした害の程度を超えなかった場合に限る、と書いています。36条1項には、この条件がありません。正当防衛は、不正な侵害に対する反撃ですから、守る利益と、相手に生じた害との釣り合いまでは、求められていないのです。道具についても、一言添えます。素手には素手、棒には棒というように、双方の道具が釣り合っていることを、武器の対等性といいます。判例には、素手の相手に刃物を構えて脅した行為について、体格や体力の差、後ずさりしても追われて目前に迫られた状況まで見て、相当性の範囲内とした判断があります。武器の対等性は、相当性を考える目安にすぎません。

相当性:何を並べて見るか 図:相当性:何を並べて見るか

では、事実を当てます。侵害の強さと反撃の強さを比べるとき、何を並べて見ればよいでしょうか? 不利な事情も、有利な事情も、あわせて考えてください。並べるのは、侵害の側、反撃の側、その場の状況の3つです。素手に薪を使ったことは、反撃の側の不利な事情です。けがが重いことも、反撃の側に並べておきます。ただし、こちらは行為ではなく結果ですから、扱いが違います。あとで確かめます。有利な事情は、その場の状況です。守ろうとする利益の重さ、侵害の激しさ、相手の危険さは、どれも侵害の側に入る事情です。被害が取り返しのつくものかどうかも、侵害の側で見ます。必要最小限度に収まっているかは、1つの事情だけでは決めません。この3つを並べて、全体で判断します。

相当性:事実を並べる 図:相当性:事実を並べる

左の列から、順に見ます。まず、侵害の側です。乙は、身長約188センチ、体重約95キロの大柄な男です。小柄な甲を突き飛ばして、壁に打ちつけ、すでに顔を殴ったうえで、もう一度、拳を振りかぶっています。顔への殴打が重なれば、重い傷害を負いかねない強さの暴行が、加えられようとしていました。次に、反撃の側です。甲は、素手の乙に、薪を使いました。これは、相当性を否定する方向に働く事情です。ここは、正面から認めます。結果も、見ておきます。乙のけがは、全治約2か月の骨折で、甲が受けそうだった被害より重いです。しかし、その場の状況を見ます。甲は、背後が壁で、右手が作業台で、正面を乙にふさがれて、動けません。出入口は、乙の背後です。逃げることもできません。その状況で、手の届く薪を、頭ではなく、拳を振りかぶった腕へ、1回だけ打ち下ろしました。乙がうずくまると、手を止めています。拳を止める緊急の手段として、不相当とはいえません。

薪を使った事実は、消えません。ただ、薪だったことだけで、結論を決めません。素手には素手でなければならない、という基準ではないからです。体重で約35キロ上回り、すでに1発殴っている乙の拳を、小柄な甲が素手で止めることは、期待できません。素手では止められない場面で、その場にあった物を、どこへ、何回使ったかまで見て、決めます。乙のけがが重いことは、扱いが違います。反撃の行為が、防衛手段として相当である以上、結果が大きいことは、結論を左右しません。測るのは、行為です。以上から、甲の反撃は、防衛手段として必要最小限度のものといえます。「やむを得ずにした行為」です。

結論

6つの要件と結論 図:6つの要件と結論

6つの言葉が、すべて満たされました。結論を書く前に、もう1つ確かめます。自分から先に手を出して相手の攻撃を招いた場合には、6つの言葉を満たしていても、正当防衛が認められないことがあります。攻撃を受ける原因を自分の不正な行為で作った人は、反撃してよい状況にいたとはいえないからです。甲は、乙に殴られるまで、乙に指一本触れていません。この例外に当たる事情は、ありません。ですから、甲の行為には、正当防衛が成立して、違法性が阻却されます。傷害罪の構成要件には当たりますが、犯罪は成立しません。

事実を1か所変える——結論が逆になる2場面

薪から手斧に変えたら 図:薪から手斧に変えたら

結論が逆になる場面も、見ておきます。事実を、1か所だけ変えます。1つ目は、反撃の強さを変えます。甲が手に取ったのが、薪ではなく、壁に立てかけてあった手斧だったとします。甲は、その手斧を、乙の右肩に振り下ろし、乙は深い切り傷を負いました。全治約3か月です。規範は、同じです。同じ順番で見ます。急迫不正の侵害も、防衛の意思も、変わりません。変わるのは、やむを得ずにした行為です。侵害の側は、素手の殴打のままです。体格差も、逃げ場のなさも、同じです。ところが、反撃のほうが、刃物を人の身体に振り下ろす、危険な行為に変わります。比べるのは、侵害の強さと反撃の強さでした。薪を腕へ打ち下ろす行為は、骨が折れるおそれのある強さにとどまります。手斧を肩へ振り下ろす行為は、当たりどころによっては、命にかかわる強さです。乙の侵害は、重い傷害を負いかねない素手の殴打で、命にかかわるとまではいえないものでした。その拳を止める手段として、命にかかわる強さの反撃は、体格差と逃げ場のなさを考えても、行き過ぎです。必要最小限度を超えています。ですから、「やむを得ずにした行為」といえず、36条1項は成立しません。

ほかの要件は満たしていますから、36条2項の話になります。防衛の程度を超えた行為、いわゆる過剰防衛で、刑を軽くしたり、免除したりできる、という条文です。成否や効果の中身は、この回では扱いません。

防衛の意思:心の内を変えると 図:防衛の意思:心の内を変えると

2つ目は、反撃のときの心を変えます。外から見える動きは、元の事例と同じです。甲は薪をつかみ、乙の右前腕に、1回だけ打ち下ろしました。ただし、甲は薪をつかんだとき、「殴られたお返しに、この腕をへし折ってやる」とだけ考えていました。乙の拳を避けようという気持ちは、少しもありませんでした。外から見える動きが同じでも、結論は変わります。元の事例では正当防衛が成立しましたが、この場面では違います。防衛の意思の基準に、当てます。侵害を認識しつつ、これを避けようとする気持ちが、ありません。あるのは、お返しをしてやるという、攻撃の気持ちだけです。防衛に名を借りて、もっぱら攻撃の意思で反撃した場合にあたります。ですから、防衛の意思は否定され、正当防衛は成立しません。過剰防衛にもなりません。過剰防衛は、防衛のための行為が程度を超えた場合の定めで、やむを得ずにした行為のほかの要件は、すべて満たしていることが前提だからです。手斧の場面は、防衛の意思があったので、36条2項の話になりました。この場面は、その防衛の意思が欠けています。ここで、急迫のところで確かめた積極的加害意思と、混同しないようにします。

積極的加害意思ともっぱら攻撃の意思の違い 図:積極的加害意思ともっぱら攻撃の意思の違い

どちらも、攻撃するつもりという、心のうちの話です。違いは、見る時点です。積極的加害意思は、侵害に臨むときの意思で、急迫性の中で見ます。もっぱら攻撃の意思は、反撃するときの意思で、防衛の意思の中で見ます。今日の甲は、乙が来ることを予期していませんでした。ですから、見るのは、反撃するときの意思、つまり防衛の意思です。

完成答案

完成答案:第1の1と2の前半 構成要件該当性、急迫不正の侵害 図:完成答案:第1の1と2の前半 構成要件該当性、急迫不正の侵害

こちらが完成答案です。1枚目には、傷害罪の構成要件に当たるところから、急迫不正の侵害までが載っています。短く通った前半の4つが、答案ではどのくらいの長さになるかを、見てください。動画を止めて、確かめてください。

完成答案:2の(3) 防衛の意思 図:完成答案:2の(3) 防衛の意思

2枚目は、防衛の意思です。怒りが混ざっていても防衛の意思は残るのか、というところから、甲の事実を当てて、否定されないと結ぶところまでが載っています。先ほどの基準の文が、一字も変えずに入っています。こちらも止めて、確かめてください。

完成答案:2の(4)(5)と3 やむを得ずにした行為、結論 図:完成答案:2の(4)(5)と3 やむを得ずにした行為、結論

3枚目は、やむを得ずにした行為と、結論です。必要最小限度の基準に、侵害の側、反撃の側、その場の状況の順で事実を当てたところまでが載っています。こちらも止めて、確かめてください。

参照条文

  • 刑法36条
  • 刑法204条

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