刑法ゼロから刑法 論文

共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別の書き方

自分では実行行為をしていない甲と丙について、共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別を答案に書き切る回。事例は、甲の指示と分け前の約束で乙が出荷場のメロンを盗み出し、丙は乙に頼まれて車を貸しただけ、というもの。規範は、共同正犯の処罰根拠(互いに他人の行為を利用し補い合う関係のもとでの物理的・心理的因果性)から、共謀、共謀に基づく実行、自己の犯罪として行う意思(正犯意思)の3要件を立て、正犯意思を欠けば幇助にとどまるとし、正犯意思は利害関係・利益の分配・影響力・実行担当者となる可能性・実行にとって必要かつ密接な行為かの5つの視点で総合して判断する。甲は5つの視点がすべて自己の犯罪の方向で窃盗罪の共同正犯、丙はすべて他人の犯罪への加担の方向で正犯意思を欠き、窃盗罪の幇助犯で刑は63条により必要的に減軽される。乙は窃盗罪の共同正犯。

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ゼロから刑法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

甲・乙・丙と、Vの出荷場 図:甲・乙・丙と、Vの出荷場

この事例は、自分では実行行為をしていない人物が2人出てくるもので、答案の最後まで書き切ります。2人とも、犯行の現場には行っていません。それでも、一人は正犯になり、もう一人は幇助にとどまります。分かれ目は、現場にいたかどうかではなく、その犯罪を自分の犯罪としておこなったかどうかです。その分かれ目を、事実で書き分けるのが、この事例の中心です。甲は、県内で青果店を営んでいます。以前は、メロン農家のVからメロンを仕入れていました。ところが、Vが販路を広げて独立したあと、仕入れを断られ、甲はVを恨んでいます。甲は、Vの出荷場のことを知っていました。農地の一角に屋根だけを張った屋外の場所で、公道から直接出入りでき、出荷の前日の夜は、箱詰めのメロンが積まれたまま、朝まで無人になります。このメロンを持ち出して自分の店で売れば、利益が出るうえ、Vにも痛手を与えられる、と甲は考えました。犯行の4日前です。甲は、日頃から甲の指示で働いている店員の乙を、店の事務室に呼んで、こう言いました。「4日後の夜、午前1時ごろ、Vの出荷場から箱詰めのメロンを車で運び出して、うちの店の裏口まで持ってこい。売った代金は、俺が8割、お前が2割だ。お前が来られないなら、俺が行く。」乙は、「分かりました」と答えました。乙は、車を持っていません。レンタカーを借りる方法もありましたが、足がつくのを避けたいと考え、高校時代の友人の丙に、「ある農園から、持ち主に黙って夜中にメロンを運び出す。荷物の積める車を一晩貸してくれ」と頼みます。丙は、Vとも甲の店とも、何の関わりもありません。丙は、乙が他人のメロンを盗もうとしていると分かったうえで、断りにくいと思い、自分のワゴン車を貸しました。謝礼として、売上額とは関係のない、決まった額、1万円を受け取る約束です。丙は、メロンの売り先も、売れる額も、乙の取り分も、計画の詳細も聞いておらず、計画について意見を言うこともしませんでした。

4日前から分け前まで、時系列 図:4日前から分け前まで、時系列

当夜、午前1時ごろです。乙は、丙のワゴン車でVの出荷場へ行き、積まれていた箱詰めのメロン40箱、時価合計で約60万円分を車に積んで、甲の店の裏口まで運びました。丙は、その夜は自宅にいました。甲は、店で待っていて、箱を受け取ります。数日のうちに、卸先の飲食店などに、合計して約50万円で売りました。そのうち約40万円を自分のものにして、約10万円を乙に渡しています。丙には、約束の1万円が渡されました。問いは、甲、乙及び丙の罪責を論じなさい、というものです。

検討の順番

検討の順番、実行者から非実行者へ 図:検討の順番、実行者から非実行者へ

検討は、乙、甲、丙の順に進めます。甲と丙は、自分では運び出していません。この2人の罪責は、実行者による実行があったことを前提にして、初めて決まります。だから、まず実行した乙の罪責を固めてから、非実行者に進みます。非実行者のうち、計画を立てた甲を先に、車を貸しただけの丙を後に置きます。正犯になる側から、幇助にとどまる側へ、線の両側を順に見るためです。

乙の罪責

刑法235条 図:刑法235条

乙から見ます。条文です。

条文刑法235条

刑法235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

乙は、Vが管理する出荷場に積まれていた、V所有の箱詰めのメロン40箱を、Vに無断で車に積んで持ち去っています。他人の財物を、占有者の意思に反して、自分や第三者の占有に移したのですから、窃取にあたります。乙には窃盗罪の構成要件に該当する行為があります。乙は、他人のメロンだと分かっていたので、故意があります。違法性を否定する事情も、責任を否定する事情もありません。乙には窃盗罪が成立します。ここは争点にしません。ただ、乙は、甲との話し合いに基づいて運び出しています。ですから、乙は共同正犯にもなりそうです。この点は、甲の検討で一緒に扱います。乙の項で共同正犯まで論じ込むことはしません。

甲の問題提起

問題提起、実行していない事実を入れる 図:問題提起、実行していない事実を入れる

甲です。ここで押さえるのは、問題提起の書き方です。成立するかどうかだけを問いにすると、なぜ問題になるのかが、答案から見えません。甲は、出荷場に行っていません。メロンも、自分では運び出していません。この事情があるから、甲が窃盗を実行したといえるのか、疑問が生じます。この事実を、問題提起の文に入れます。条文を確認します。

条文刑法60条

刑法60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

60条の文言は、共同して犯罪を実行した、です。実行を分担していない甲が、ここに含まれるのか。実行を分担しない者が共同正犯になるための要件が、問題になります。なお、共謀共同正犯そのものを認めるかどうかは、否定する見解と認める見解を比べた対立です(共謀共同正犯——手を下していない者をなぜ正犯とするか)。答案では、そこには入りません。認める前提で、要件を事実に当てていきます。

規範

規範は、処罰根拠から出てくる 図:規範は、処罰根拠から出てくる

規範に入る前に、確認です。共謀共同正犯の成立要件を学んだ回(共謀共同正犯の成立要件——共謀・共謀に基づく実行・正犯意思)で見たとおり、要件は3つで、共謀、共謀に基づく実行、正犯意思です。ここでは、この3つがどこから出てくるのかを、道筋で見ます。出発点は、処罰根拠です。共同正犯が、一部の者が実行したことについて、他の者にも責任を負わせるのは、なぜか。互いに他人の行為を利用し補い合う関係のもとで、結果に対して、物理的にも心理的にも因果性を及ぼしたからです。共犯の処罰根拠の回で見た、2つの経路です。この事例で言えば、甲の指示と分け前の約束が、乙の決意を固めたのが、心理的な経路です。乗っていく車のように、実行を形のうえで支えるのが、物理的な経路です。そして、この因果性は、実行行為以外の関与によっても及ぼせます。計画を決める、指示を出す、といった関与です。だから、自分で実行を分担しない者も、共同正犯になりえます。ここまでが、60条の文言から、甲を含められる理由です。次に、その因果性を、どう確かめるか。一つ目は、共謀です。互いに相手を当てにし合う、という意思の連絡があって、心理的なつながりができているかを見ます。二つ目は、共謀に基づく実行です。そのつながりの上で、実際に実行が行われたかを見ます。この2つで、因果性を確かめます。ところが、因果性だけでは足りません。因果性は、幇助犯にもあります。車を貸した人も、運搬を容易にして、結果に因果性を及ぼしているからです。共同正犯と幇助を分けるものが、さらに必要になります。それが、三つ目の、自己の犯罪として行う意思、つまり正犯意思です。他人の犯罪に加担する意思なら、幇助です。自己の犯罪として行う意思なら、正犯です。

最後に、正犯意思は内心ですから、外からは見えません。そこで、外に現れた事情を総合して判断します。その視点が、5つあります。では、カードを見ます。

規範カード|共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別 図:規範カード|共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別

カードの全文です。

⭐ 論文で書く規範:共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別(処罰根拠)
共同正犯が、一部の者が実行したことについて他の者にも責任を負わせるのは、互いに他人の行為を利用し補い合う関係のもとで、結果に対して物理的・心理的な因果性を及ぼしたからである。この因果性は、実行行為以外の関与によっても及ぼしうるから、自ら実行を分担しない者も、共同正犯となりうる。
(規範(最大判昭33・5・28+通説))

続きです。成立要件と、正犯意思の判断です。

⭐ 論文で書く規範:共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別(成立要件と正犯意思)
そして、共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実がなければならない(①共謀、②共謀に基づく実行)。さらに、実行を担当しない者が正犯であるためには、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたといえなければならないから、③自己の犯罪として行う意思(正犯意思)が必要であり、これを欠く場合は、幇助犯にとどまる。
正犯意思があるかは、犯罪の結果に対する利害関係、利益の分配の有無と割合、合意の形成に対する影響力、自ら実行担当者となりうる可能性、担当した行為が実行行為にとって必要かつ密接なものであったか、などを総合して判断する。
(規範(最大判昭33・5・28+通説))

判決の全文を見ます。

判例、共謀共同正犯の成立 図:判例、共謀共同正犯の成立

判例最大判昭33・5・28 刑集12巻8号1718頁

共謀共同正犯の成立
共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがつて右のような関係において共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。

最初の文が、共謀と、共謀に基づく実行の定式です。次の文の、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行った、という言葉が、三つ目の要件の出発点です。

正犯意思を判断する5つの視点 図:正犯意思を判断する5つの視点

5つの視点を、一つずつ確認します。1つ目は、利害関係です。この犯罪の結果で、得をするのか、損をするのかを見ます。2つ目は、利益の分配です。分け前があるか、あるなら割合はどうかを見ます。3つ目は、影響力です。計画の中身を決めるとき、どれだけ影響を与えたかを見ます。4つ目は、実行担当者となる可能性です。自分が実行する立場にもあったかを見ます。5つ目は、実行にとって必要かつ密接な行為かどうかです。その人の行為が、犯行にとって欠かせないほど重いかを見ます。どれか一つで決まるのではなく、総合して判断します。では、甲に当てはめます。

甲のあてはめ・共謀と実行

甲の共謀と共謀に基づく実行 図:甲の共謀と共謀に基づく実行

一つ目の要件、共謀から見ます。犯行の4日前に、店の事務室で、甲が乙に、午前1時ごろ、Vの出荷場から、箱詰めのメロンを車で運び出して、店の裏口まで持ってくること、売った代金は甲が8割、乙が2割にすることを告げています。乙はそれを承諾しました。窃盗という特定の犯罪を行うために、甲は乙による持ち出しを、乙は甲による売却を、互いに利用し合う内容の意思の連絡です。犯罪の重要な部分が、事前に口頭で定まっています。共謀が認められます。二つ目は、共謀に基づく実行です。乙は、定められた午前1時ごろに、Vの出荷場から箱詰めのメロンを運び出して、甲の店の裏口まで運んでいます。共謀の内容どおりの実行です。共謀に基づく実行が認められます。ここまでは、短く済ませます。

甲のあてはめ・正犯意思

甲の5つの視点、自己の犯罪の方向 図:甲の5つの視点、自己の犯罪の方向

ここからが、この事例の中心です。甲は、現場に行っていません。それでも、甲が自己の犯罪としておこなったといえるかどうかは、先の5つの視点を事実に当てて判断します。現場にいないことは、決め手にはなりません。5つを、一つずつ当てます。1つ目は、利害関係です。甲は、仕入れを断られたことでVを恨み、メロンを売って利益を得るとともに、Vに痛手を与えようと考えて、この計画を思いつきました。犯行の目的も成果も、甲自身の利益と感情に直結しています。強い利害関係があります。これは、正犯意思を基礎づける事情です。2つ目は、利益の分配です。売却代金は約50万円で、そのうち約40万円、8割を甲が取っています。乙は約10万円、2割です。犯罪による利益の大半を、甲が得ています。これも、正犯意思を基礎づけます。3つ目は、影響力です。標的はVの出荷場、日時は4日後の午前1時、運搬先は店の裏口、分け前は8割と2割。これらすべてを、甲が決めて乙に指示しました。乙は、日頃から甲の指示で働く店員で、そのとおりに従っています。計画の内容を決めるうえで、甲は圧倒的な影響力を持っていました。正犯意思を基礎づけます。4つ目は、実行担当者となる可能性です。甲は、Vの出荷場の様子と、夜は無人になることを知っていました。そして乙に、お前が来られないなら、俺が行く、と告げています。甲自身が、実行を担当する立場にもあったということです。乙の運び出しは、甲が自分で行う代わりに、乙にさせたものと評価できます。正犯意思を基礎づけます。

5つ目は、実行にとって必要かつ密接な行為かどうかです。甲は、計画を決めて乙に実行させました。そのうえ、店で盗んだメロンを受け取り、卸先に売って、お金に換えています。犯行の最初から最後まで、中心になる役割です。正犯意思を基礎づけます。5つとも、自己の犯罪の方向を向いています。総合すると、甲は、乙の行為をいわば自己の手段として、窃盗を行ったといえます。正犯意思が認められます。

甲の結論

甲の結論、乙も共同正犯 図:甲の結論、乙も共同正犯

結論です。3つの要件がそろいました。甲は、乙と共同して犯罪を実行した者にあたります。窃盗罪の共同正犯、60条、235条の罪責を負います。乙も、甲との共謀に基づいて実行していますから、同じ窃盗罪の共同正犯です。なお、乙は、事情を分かったうえで断ることもできた店員で、甲に操られた道具ではありません。ですから、甲を、乙を道具として利用した間接正犯とする筋は立ちません。これは、間接正犯で見た、断る自由がある人は道具にならない、という話です。

丙の問題提起

丙の問題提起、共同正犯か幇助か 図:丙の問題提起、共同正犯か幇助か

丙です。丙も、出荷場に行っていませんし、メロンを自分では運び出していません。丙がワゴン車を貸した行為が、乙と共同して窃盗を実行したといえるのか。それとも、乙の窃盗を幇助したにとどまるのか。共同正犯と幇助犯の区別が、問題になります。幇助の条文を確認します。

条文刑法62条1項

刑法62条1項(幇助)
正犯を幇助した者は、従犯とする。

規範は、甲に使ったものと同じです。答案では、丙の項にも、同じ規範を書きます。

丙のあてはめ

規範は同じ、共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別 図:規範は同じ、共謀共同正犯の成否と幇助犯との区別

丙は、乙から、持ち主に黙ってメロンを夜中に運び出すと聞いたうえで、車を貸すことを承諾しました。乙は、その車で実際にメロンを運んでいます。そこで、共謀と共謀に基づく実行は、仮に認められるとして先へ進みます。この2つがそろっていても、正犯意思が無ければ、共同正犯にはならず、幇助にとどまるからです。正犯と共犯の区別を正面から扱った回(予備罪の教唆・幇助と正犯・共犯の区別——見張り役は、共犯者か、それとも正犯か)では、役割の重要性と正犯意思の2つで測りました。共謀と実行という外側を先に確かめるこの形では、残る正犯意思1つで決まります。決め手は、三つ目の正犯意思です。ここで切ります。

丙の5つの視点、他人の犯罪に加担した方向 図:丙の5つの視点、他人の犯罪に加担した方向

丙も、現場には行っていません。では、甲とどこが違うから、結論が分かれるのか。車を貸したか、現場にいたかという外形では、分かれません。甲も現場にいませんでした。見張り役でも、役回りの外形だけでは正犯か幇助か決まらない、と前に見たのと同じです。分かれ目は、中身です。甲と同じ5つの視点を、同じ順番で当てます。1つ目は、利害関係です。丙は、Vとも甲の店とも、関わりがありません。乙に頼まれて、断りにくくて貸しただけです。犯罪の結果に、自分の利害関係はありません。2つ目は、利益の分配です。丙が受け取る約束をしていたのは、売上額とは関係のない、決まった額、1万円の謝礼です。メロンの売り先も、売れる額も聞いていません。車を貸したことへの対価であって、犯行の成果の分配を受けたとはいえません。3つ目は、影響力です。標的、日時、運搬先、分け前の割合は、丙に頼む前に、甲と乙の間で決まっていました。丙は、計画の詳細も聞かされておらず、意見も言っていません。計画の内容に対する影響力は、ありません。4つ目は、実行担当者となる可能性です。丙は、当夜は自宅にいて、運び出しを担当するよう頼まれてもいません。自分で実行を担当する可能性は、ありません。5つ目は、実行にとって必要かつ密接な行為かどうかです。丙が担ったのは、車の貸与だけです。運搬を容易にはしますが、乙はレンタカーを借りることもできました。代わりのきく協力にとどまり、犯行全体の中での役割は重くありません。

5つとも、他人の犯罪に加担した方向を向いています。総合すると、丙は、乙の犯罪に車を貸して加担したにすぎません。自己の犯罪として行う意思があったとはいえません。正犯意思が認められませんから、丙は、窃盗罪の共同正犯にはなりません。線の位置も、示しておきます。もし丙が、売却代金の一定の割合を受け取る約束をして、計画の段取りにも加わっていたなら、視点の向きが変わります。そのときは、結論も動きます。

幇助犯の成否

幇助犯の成立要件、条文どおり 図:幇助犯の成立要件、条文どおり

共同正犯にならなくても、丙は何も罪に問われない、というわけではありません。62条1項の、正犯を幇助した者にあたるかを確認します。幇助犯は、前に見たとおり、条文の文言を割った4つの要素を確認していけば足ります。1つ目は、幇助行為です。丙は、乙が窃盗をすると分かったうえで、そのために使う車を貸し、運搬を容易にしています。2つ目は、正犯の実行行為です。乙は、その車でメロンを運び出しています。3つ目は、正犯の結果です。乙の窃盗は、既遂に至っています。4つ目は、幇助の故意です。丙は、乙が窃盗をすることを認識し、これを容易にする意思で車を貸しました。丙の貸した車は、実際に運搬に使われています。丙の行為は、乙の実行を促進したといえます。丙には、窃盗罪の幇助犯が成立します。

63条の減軽

刑法63条 図:刑法63条

最後に、刑の扱いです。

条文刑法63条

刑法63条(従犯減軽)
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

従犯の刑は、正犯の刑を減軽します。この減軽は、必要的です。必ず減軽する、という意味です。比べると分かりやすいのが、未遂犯のところで見た43条本文です。こちらは、減軽することができる、と書いてあります。減軽するかどうかを、裁判所が選べる、という意味です。これを任意的な減軽といいます。63条は、減軽する、と言い切っていますから、裁判所に選ぶ余地はありません。共同正犯と幇助犯の結論の差は、この刑の減軽の有無に表れます。

結論

結論、甲・乙・丙の罪責 図:結論、甲・乙・丙の罪責

結論です。乙は、窃盗罪の共同正犯、60条、235条の罪責を負います。甲も、窃盗罪の共同正犯、60条、235条の罪責を負います。丙は、窃盗罪の幇助犯、62条1項、235条の罪責を負い、その刑は63条で減軽されます。罪数は、各人とも1罪です。

甲と丙、5つの視点の比較 図:甲と丙、5つの視点の比較

甲と丙を、並べます。どちらも、現場にはいません。丙は車という物まで出しています。外形の違いでは、結論は分かれません。5つの視点の向きが、甲はすべて自己の犯罪、丙はすべて他人の犯罪でした。この向きの違いが、共同正犯と幇助犯を分けています。

完成答案

完成答案:第1 乙の罪責、第2 甲の罪責① 図:完成答案:第1 乙の罪責、第2 甲の罪責①

完成答案です。ここまでの節の順のまま並べています。1枚目は、乙の窃盗罪の構成要件該当性と結論、そして甲の問題の所在です。

完成答案:第2 甲の罪責② 図:完成答案:第2 甲の罪責②

甲の規範です。共同正犯の処罰根拠から因果性を立て、共謀・共謀に基づく実行・正犯意思の3要件と、正犯意思を判断する5つの視点を書きます。

完成答案:第2 甲の罪責③ 図:完成答案:第2 甲の罪責③

甲のあてはめの前半です。共謀と共謀に基づく実行を認め、正犯意思は利害関係と利益の分配(約40万円・8割を甲が取得)まで当てます。

完成答案:第2 甲の罪責④ 図:完成答案:第2 甲の罪責④

甲のあてはめの続きです。影響力、実行担当者となる可能性、実行にとって必要かつ密接な行為を当て、小括で正犯意思を認めます。

完成答案:第2 甲の罪責⑤、第3 丙の罪責① 図:完成答案:第2 甲の罪責⑤、第3 丙の罪責①

甲の結論(窃盗罪の共同正犯、乙も同罪の共同正犯)と、丙の問題の所在(共同正犯か、62条1項の幇助犯か)です。

完成答案:第3 丙の罪責② 図:完成答案:第3 丙の罪責②

丙の規範です。甲と同じ規範を、丙の項にも書きます。

完成答案:第3 丙の罪責③ 図:完成答案:第3 丙の罪責③

丙のあてはめです。共謀と共謀に基づく実行は仮に認められるとして、正犯意思を5つの視点で当て、利害関係、利益の分配、影響力、実行担当者となる可能性、必要かつ密接な行為のいずれも否定します。

完成答案:第3 丙の罪責④、第4 結論 図:完成答案:第3 丙の罪責④、第4 結論

丙の小括と幇助犯の成否(4要素をすべて認める)、63条による減軽、そして全体の結論です。

参照条文

  • 刑法60条
  • 刑法62条1項
  • 刑法63条
  • 刑法235条
  • 刑法43条

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